2008年12月03日 00:00 〜 00:00
会田弘継・共同通信編集委員室次長

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会見リポート

米国の思索の営みを解きほぐす

飯山 雅史 (読売新聞調査研究本部管理部長)

「アメリカは若い国だから思想なんてない」という俗説を信じてアメリカ取材を始めると、手痛いしっぺ返しを食うことになる。「保守主義」、「ネオコン」、「リベラリズム」、毎日の原稿で使うこうした言葉一つ一つの背景には、知の巨人が考え抜いた思索の重みがぶら下がっていて、いい加減に批判すれば、返す刀で自分の浅薄な思想があざ笑われる。それを、あらためて思い知らされるのが会田さんの近著だ。

ニューディール政策以来、アメリカではリベラリズム全盛の時代が続いた。その影で、「不毛の思想」とさえ言われ、メディアからは「キワモノ」扱いされてきた保守主義の、実は重厚な思索の営みを、会田さんはきれいに解きほぐしていく。知的に洗練された保守主義は、レーガン政権の登場以来、アメリカ政治を動かす思想的基盤となっていく。

会田さんが強い関心を寄せるのは、ネオコンだ。民主主義の拡大を主張して華々しくイラク戦争を主導した彼らは、イラク情勢の泥沼化とともに「戦争好きの共和党タカ派集団」というレッテル貼りでケリがつけられ、過去の遺物とされそうになっているけれども、会田さんが講演でも強調したように、ネオコンの思想はそんなに浅はかなものではない。スターリニズムへの反発から出発したI・クリストルらの初期ネオコンは、「理想主義で崩壊しそうになったアメリカを、現実主義で正していこうとした人たち」で、彼らの主張は「21世紀でも意味を持ち続けるのではないか」、と会田さんは考える。

民主党オバマ政権が誕生する。大恐慌以来の経済危機を迎え「保守主義の時代の終わり」「36年周期のアメリカ政治再編」につながるとの見方もある。アメリカ政治にパラダイム・シフトが起きるのかどうか。思想の動きからは目が離せない。

ゲスト / Guest

  • 会田弘継 / Hirotsugu AIDA

    共同通信編集委員室次長 / Deputy-Head, Editorial Office, Kyodo Press

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