2026年04月08日 15:00 〜 16:00 10階ホール
「給付付き税額控除と社会保障」翁百合・日本総研シニアフェロー

会見メモ

超党派の社会保障国民会議の下に設置された有識者会議で、高市早苗政権が導入をめざす給付付き税額控除の制度設計に関する議論がスタートした。

議論の出発点に位置付けられているのは、税金と社会保険料から給付を差し引いた実質的な負担率が世帯年収に応じどのように変化しているのかを、グラフに落とし込んだいわゆる「翁カーブ」。考案者で有識者メンバーでもある翁百合さんが、負担率についての日本とOECDの比較分析の結果や先行する米国、英国の事例などをもとに、日本での導入にあたりどの点に重点をおいて検討すべきなのかなどについて話した。

 

司会 今井純子 日本記者クラブ企画委員(NHK)

 

※YouTubeでのアーカイブ配信は、ゲストの希望により行いません。


会見リポート

「負担と給付」は省庁横断で

堀井 恵里子 (毎日新聞社論説委員)

 「翁カーブ」という言葉をご存じだろうか。政府の「社会保障国民会議」で、中・低所得者を支援する「給付付き税額控除」を巡る議論の出発点になっている。この日の演者、翁氏による試算だ。

 所得税、住民税、年金や医療などの社会保険料の負担から、児童手当などの現金給付を差し引いたものを分子、年収を分母として「負担率」を算出。負担率が世帯年収によってどう変わるかグラフ化している。

 2021年のデータで経済協力開発機構(OECD)の平均と比べたところ、日本は生活保護水準をやや上回る世帯で負担率が高いことが示された。翁氏は「低所得の就労ディスインセンティブにもなっている。これを直視する必要がある」と指摘した。また、子どもがいる共働きの低所得世帯への支援が、国際的にみてあまり十分でないことも示され、「生活にゆとりのない若年世代を支援することが大事だ」と訴えた。こうした課題に対処する形で、給付付き税額控除の議論は進んでいる。

 国民の受益と負担については、保育や医療の現物サービスを加えて見るべきだとの指摘があり、翁氏も「そういう留意点があることも考えておく必要がある」としたうえで、「勤労世帯の30代、40代は保険料を払っているが、(年金などの)給付を受けるのは高齢期で時間差がある。勤労層の手取りがどうなっているかをみる上では、現金給付と負担を比較することの重要性は大きいと考える」と説明した。

 社会保障制度は年金、医療、福祉など制度別に議論されがちだが、翁カーブで示されたようにトータルの受益と負担をみていく事は大切だ。翁氏も「省庁横断的な検討が必要。給付付き税額控除を含む税と社会保障の一体改革として、就労ディスインセンティブにならない、なだらかで累進度をある程度持った負担率のカーブを実現すべきだ」と訴えた。


ゲスト / Guest

  • 翁百合 / Yuri OKINA

    日本総研シニアフェロー / Senior Fellow, The Japan Research Institute, Limited

研究テーマ:給付付き税額控除と社会保障

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