2026年06月29日 17:00 〜 19:00 10階ホール
2026年度日本記者クラブ賞・同特別賞 受賞記念講演会

会見メモ

2026年度の日本記者クラブ賞を受賞したジャーナリストで共同通信社社友の菅谷齊さん(=写真1枚目)、同特別賞を受賞した東日本放送「旧優生保護法問題」取材班(代表:髙橋直希 東日本放送報道制作局報道部= 写真2枚目)と、TBSテレビ「報道特集」兵庫県問題取材チーム(登壇者:村瀬健介 TBSテレビ「報道特集」キャスター =写真3枚目)が印象に残る取材や報道にかける思いなどを語った。

 

司会 江木慎吾 日本記者クラブ専務理事・事務局長

 

■贈賞の理由■

【日本記者クラブ賞】

菅谷齊 ジャーナリスト、共同通信社社友

50年以上、プロ野球を取材し、82歳の今もコラムを書き続ける。『日本プロ野球の歴史~激動の時代を乗り越えて~』は、スポーツの精緻な記録にとどまらず、「二・二六事件」の年に産声を上げたプロ野球リーグ戦が、歴史の荒波にもまれながら日本の社会に根付いていった様を、豊富なエピソードとともに描き、スポーツジャーナリズムの価値を高めた。

 

【日本記者クラブ賞特別賞】

東日本放送「旧優生保護法問題」取材班

旧優生保護法下の強制不妊手術に世の中が注目していなかった1997年から宮城県の被害者の訴えに耳を傾け、早い時期に番組を通して非人道性を訴えた。4人の記者と1人のプロデューサーがバトンをつなぎ1人の被害者に寄り添い、旧優生保護法を憲法違反とする最高裁判決を勝ち取るまで追い、地方に根差したジャーナリズムの公共的な役割を示した。

 

TBSテレビ「報道特集」兵庫県問題取材チーム

兵庫県政と県知事選挙の混乱を追うキャンペーン報道により、デマや中傷がSNSを通じて拡散され、人権を踏みにじり、選挙の結果にまで影響を及ぼすさまを追った。番組関係者のみならず、スポンサーまでもが激しい攻撃にさらされる中、事実を追及する姿勢を貫き、デマ拡散の仕組みに深く切り込んだ調査報道は、現代社会の病理を浮かび上がらせた。


会見リポート

クラブ賞 菅谷齊さん

(ジャーナリスト、共同通信社社友)

●プロ野球「運の強い生き物」

 プロ野球を「実に運の強い生き物」と表現する。長嶋茂雄氏が生まれる前年(1935年)、暴漢に襲われ瀕死の重症を負った正力松太郎氏が一命を取り留めたことがラッキーの始まり。読売中興の祖である正力氏は「希代の興行師」と評される。戦後は外圧。GHQが統治政策の一環として野球を利用、終戦の年に東西対抗を開催させたことが野球発展の礎になった。川上哲治氏の巨人軍復帰を後押ししたのが農地改革。契約金で故郷熊本の農地を買い上げ家族の生活を助けた。官営の国鉄がプロ野球に参入できたこともしかり。統治政策によってもたらされた今でもある「外圧効果」だ。

 会場での質疑応答で「大谷以上に活躍できたと思われる選手は?」には「王貞治さん」。高校時代、柴田勲氏のチームメイトだった球歴から、王さんのすごさを空振りしない、選球眼がいい、必ず捉えると評し「今の大リーグなら3割5分、60本塁打以上、150打点。三冠王」と断言した。

 50年を超える取材歴で今なおコラムニスト。生き字引でご意見番的存在の受賞を王貞治氏は「すごく前向きな人。必要な人」と評して喜んだ。 

宮内 正英(スポーツニッポン新聞社特別編集委員)

 

特別賞 東日本放送「旧優生保護法問題」取材班

(髙橋直希 東日本放送報道制作局報道部)

●取材のバトン4人でつなぐ

 私は16歳のとき、子どもを産めなくする手術を受けさせられた――。

 受話器の向こうから聞こえた女性の言葉が、記者の心をつかんだ。khb東日本放送が、旧優生保護法による被害の実態を追い始めたきっかけは1997年、報道部にかかってきた1本の電話だった。以後、この問題を担当する記者らが「取材のバトン」をつなぎ、28年にわたるキャンペーン報道で放映されたニュースや企画は200本以上。特筆すべきは、電話の主である飯塚淳子さん(仮名、80代)に記者たちが、寄り添い続けたことだ。飯塚さんの存在が同局の番組で報じられ、それらが国賠訴訟の流れをつくった。講演会では現在の4代目、髙橋直希記者(28)がそうした経緯を報告した。被害の声を上げる決意をした飯塚さんは当時、複数の新聞社やテレビ局に同様の電話をかけたという。だが、他社の反応は鈍かった。

 「声なき声をすくいあげる」のが記者の役目の一つといわれる。でも、こうして「上がった声」に対し、きちんと向き合ってきたのか。同局の受賞は、私自身の記者生活を振り返るきっかけになった。

明珍 美紀(毎日新聞社編集局) 

 

特別賞 TBSテレビ「報道特集」兵庫県問題取材チーム

(村瀬健介 TBSテレビ「報道特集」キャスター)

●虚偽・誹謗の攻撃を許さず

 受賞は取材チームが培ってきたジャーナリスト魂の成せる業だった。虚偽や誹謗中傷がSNSに掲載、拡散され、民主主義が歪められることを看過しなかった。スタッフだけでなく、番組関係者や取材協力者、スポンサーまでがSNSの攻撃にさらされても、取材チームは問題意識を共有し、揺らぐことはなかった。パワハラ疑惑とその内部告発で揺れた兵庫県政、斎藤元彦知事の出直し知事選…と取材を重ね、繰り返し報道した。

 複数の自殺者を出すなど痛ましい展開もあった。知事選ではSNSの病理が社会問題として浮き彫りになった。その元凶がN党の立花孝志党首だった。攻撃の矛先を自在に決められるある種の権力者だった。取材チームの報道が警察と検察を動かし、立花党首は逮捕・起訴に至った。ジャーナリズムがSNSの病理に打ち勝ったのである。

 テレビや新聞はオールドメディアと揶揄され、「そんな媒体に何ができるのか」と批判される。しかし、取材チームは見事、揶揄や批判をはねかえし、報道の役割を果たした。これからも豊富な経験を生かしてSNSの病理をえぐり出し、ジャーナリスト魂を武器に戦ってほしい。

 木村 良一(ジャーナリスト・作家、元産経新聞論説委員)


ゲスト / Guest

  • 菅谷齊 / Hitoshi SUGAYA

    ジャーナリスト、共同通信社社友

  • 髙橋直希 / Naoki TAKAHASHI

    東日本放送報道制作局報道部記者・ディレクター

  • 村瀬健介 / Kensuke MURASE

    TBSテレビ「報道特集」キャスター

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