2026年06月08日 13:00 〜 14:30 10階ホール
「人口減少時代を生きる」(12) 藤波匠・日本総研主席研究員

会見メモ

日本総研主席研究員の藤波匠さんは、国・地方が行ってきた東京一極集中是正対策は、中高年男性の地方移住に一定の成果をもたらしたものの、本来ターゲットとしていた若手・女性の地方からの流出の歯止めにはつながらなかったとする報告書を今年3月に公表した。

「女性・若者の雇用と『地方創生』」をテーマに、地方からの人口流出の現状と特徴、女性・若者の移動と雇用の関係などについて解説するとともに、必要な政策の在り方などについて話した。

 

司会 小林伸年 日本記者クラブ企画委員(時事通信社)


会見リポート

地方は質の高い雇用の創出を

中村 奈都子 (日本経済新聞社編集委員兼論説委員)

 まずは2015年度から本格的に始まった地方創生策を振り返る。結論からいえば、狙い通りの成果には至らなかった。施策は移住促進に過度に依存し、移住者の増加は地域全体の転入者増につながらなかった。特にコロナ禍以降の東京圏から地方への異動は中高年男性に偏った。「男性中心の政策設計に中高年男性は反応したが、女性には響かなかった」という藤波氏の指摘は示唆に富む。

 人口移動の要因として改めて重要なのは雇用だ。女性も「自分にとってよりよい仕事はどこにあるか」が判断基準となり、質の高い仕事がなければ地方は受け皿とはなりにくい。情報通信産業など、賃金・昇進におけるジェンダーギャップの比較的小さい業界が大都市に集中したことも女性の大都市流入の一因となっている。女性に選ばれるには、採用や昇進、賃金における格差の是正が不可欠だ。

 もっとも、大都市集中の構図には変化の兆しも見られる。地価上昇により都心部への流入が鈍化し、周辺都市への分散が進む。一方で共働き世帯の増加を背景に職住近接や子育て環境を重視する動きが強まっている。

 こうした変化を踏まえれば、地方に求められるのは移住促進ではなく、女性や若年層にとって魅力ある質の高い雇用の創出だ。固定的な性別役割分業意識からの脱却は地域社会全体で取り組むテーマだ。

 ただし地方単独での対応には限界がある。国主導で在宅勤務の普及を進め、地方にいながら都市と同等の働き方を可能にする必要がある。子育て支援策は地域間格差を是正し、全体を底上げすることが求められる。

 人口減少や都市集中、とりわけ女性が地方から流出する背景に何があるのか。日ごろなんとなく感じていたモヤモヤを、藤波氏は精緻なデータに基づいて明らかにした。この10年に意味があったとするなら、やるべきことがクリアになった点だろう。ここから問われるのは実行力だ。


ゲスト / Guest

  • 藤波匠 / Takumi FUJINAMI

    日本総研主席研究員

研究テーマ:人口減少時代を生きる

研究会回数:12

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