2026年08月21日 14:00 〜 15:30 10階ホール
「中国で何が起きているのか」(34) 山口信治・防衛研究所主任研究員

会見メモ

防衛省防衛研究所中国研究室の山口信治主任研究員が、中国の核戦力の近年の変化や実態について分析した。

 

司会 高橋哲史 日本記者クラブ企画委員


会見リポート

「核の即応態勢」整える動き

新貝 憲弘 (東京新聞論説委員)

 情報の不透明さが増す中国で軍事、とりわけ核戦力は最も謎が多い分野だといえよう。そんな機密性の高い中国の核戦略について、山口氏は公開情報に基づきながらその変化と懸念をクリアに解説した。

 中国の核戦略は、核攻撃を受けて初めて反撃として用いる「先行不使用」を原則に核弾頭保有数を必要最小限にとどめ、攻撃方法も地上発射のみだった。しかし7月に潜水艦発射弾道ミサイル(SLBM)の発射実験、8月にはミサイルを搭載した爆撃機が公開され、従来の陸に加え海と空からの攻撃手段が加わり「核の三本柱」を備えるようになったという。

 核弾頭数も2010年ごろまでは米ロより一桁少ない240発だったのが24年には500発(いずれも推計)と倍増、35年には最大で1500発に達して米ロが実戦配備する弾頭数に匹敵するとの予測もあり、中国が「第3の核大国」になると指摘。極超音速で滑空する弾頭の開発や衛星・レーダーによる早期警戒態勢の整備など攻撃・防衛両面の能力も向上、威力の小さい低出力の核開発を進めているとの情報もあり、先行不使用の原則は維持しつつも攻撃を受ける前に反撃する「即応態勢」が整いつつあると分析した。

 山口氏は中国の核戦力が米ロに近づいた結果、「核の威嚇」効果が薄れて通常戦力を使いやすくなる状況になっていると指摘。核軍縮の交渉も2国間から3国間となるため調整が難しくなる懸念も挙げた。こうした中国の核戦略の変化は、中国共産党トップである習近平氏の意向が働いているのは確かなのだが、その意図は分からない部分も多いという。

 公開情報から「確定的」と「推測、推計」を明確に分類した上で分析した山口氏。それだけに「さまざまな推測が成り立つが故に、冷静で客観的な分析から始めるべきだ」との指摘は重い。


ゲスト / Guest

  • 山口信治 / Shinji YAMAGUCHI

    防衛研究所 地域研究部 中国研究室主任研究官 / Senior Fellow, China Division, Department of Area Studies, The National Institute for Defense Studies (NIDS)

研究テーマ:中国で何が起きているのか

研究会回数:34

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