2026年09月24日 15:00 〜 16:30 9階会見場
著者と語る『おどろきの刑事司法 “犯罪者”の作り方』 村木厚子・元厚生労働次官

会見メモ

村木厚子・元厚生労働時間の著書『おどろきの刑事司法 “犯罪者”の作り方』(講談社新書、2026年3月)は、郵便不正事件で起訴され、2010年に無罪が確定した自身の経験を踏まえ、刑事司法の問題点を指摘している。

村木さんが、著書の内容を踏まえつつ、自身が経験した取り調べ、刑事司法の実態について話した。

 

司会 猪熊律子 日本記者クラブ企画委員(読売新聞)


会見リポート

絶望の前に語り続ける

井田 香奈子 (朝日新聞社オピニオン編集長)

 起きた犯罪の責任者を調べ、必要な処罰をするはずの刑事司法が、自ら「犯罪者」を作り出す――。

 近著のタイトルは強烈だが、村木さんが巻き込まれた冤罪事件、そしてその後も違法な捜査や長期勾留をめぐる問題が相次いでいることを考えると、納得してしまう。

 厚生労働省局長だった2009年、郵便不正事件で大阪地検特捜部に逮捕・起訴され、その後、無罪が確定した。主任検事は捜査の見立てに合わせて証拠の改ざんまで行い、上司も含め検事3人が有罪になった。

 その体験は既に本にしている。十数年経て新たに出版したのは「『ない事件』を仕立て上げる。弱い人を責め立てて自白を引き出し、トップに攻め上がる事件が続いている」のを見過ごせなかったからだ。

 自らが罪に落とされかけた事件は法務省の刑事司法改革のきっかけになり、法制審議会部会の委員として刑事訴訟法改正の過程にかかわった。しかし取り調べの録音・録画制度は導入されたが対象は限定されるなど、思っていたような改革にならなかった。

 19年に全面施行された改正法の「3年後の見直し」作業は今も続くが、「マスコミにも非公開。議事録も忘れたころに出て、話題にならない」。官僚としての経験からみても、今のやり方は「検討中」を掲げた時間稼ぎだと、不信感を率直に語った。

 本には、検察と同様の力で裁判所、弁護側も証拠を見られるようにするなど、刑事司法への具体的な提言も盛り込んでいる。

 近年は不当な取り調べで検察官が罪に問われるケースが続いているが、「『しくみ』として考え直さねばならない」と強調した。刑事司法の機能はほかに置き換えられない。「検事を続けるなら検察にいるしかない。いい人が行きたい組織にすることだ」。まだ、絶望はしたくないのだと、そのときは笑顔を見せた。


ゲスト / Guest

  • 村木厚子 / Atsuko MURAKI

    元厚生労働次官、社会福祉協議会会長 / Former Administrative Vice-Minister of Health, Labour and Welfare

研究テーマ:おどろきの刑事司法 “犯罪者”の作り方

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