会見リポート
2026年09月07日
13:00 〜 14:30
10階ホール
「2026熊本地震」保健医療福祉対応の進化と生活支援 阿南英明・神奈川県立病院機構理事長、日本災害医学会理事
会見メモ
救急医学や災害医学が専門。東日本大震災や2016年の熊本地震、能登半島地震でDMAT(災害派遣医療チーム)の指揮運営にあたり、新型コロナウイルスでは神奈川県の医療危機対策統括官として医療行政を指揮した。今回の熊本地震では、全国から現地へ入るDMATの活動を差配、分析してきた。「令和8年熊本地震から見える保険医療福祉分野の支援体制の現状と生活支援体制の課題そしてわれわれは何を守るのか」をテーマに話した。
司会 永山悦子 日本記者クラブ企画委員(毎日新聞社)
会見リポート
「人生の悲劇」を減らす災害医療
石原 佳歩 (共同通信社くらし報道部)
これまで阿南氏が経験した災害医療の教訓を踏まえ、会見では「命を救う医療」から「生活や人生を支える医療」への視点に転換していく姿勢が伺えた。
近年では、地震による直接死よりも、避難生活や環境悪化による「災害関連死」が課題だ。阿南氏は、災害医療では人員や物資だけでなく、それらを最適に配分する「マネジメント」が不可欠であると言及。必要な場所に必要な支援を届けるには、現場情報の収集、需要予測、物資調達、搬送調整を一体的に運営する必要がある。しかし、自治体職員は避難所開設までは対応できても、物資の集積や管理などの経験や専門ノウハウが不足しているため、今回の熊本地震では「ラストワンマイル問題」として顕在化した。
また、被災地での医療体制の確保も重要だ。発災直後からDMAT(災害派遣医療チーム)が病院支援を行うが、さらなる医療需要の増大を防ぐには、介護・福祉施設への支援が欠かせない。通常の投薬や生活環境が維持されなければ高齢者は急速に体調を崩し、病人を増やすことになる。熊本地震では熱中症対策として、空調環境を施設ごとに評価することで、それぞれの課題に合わせて早急に改善したことも、多数の高齢者の健康悪化を防いだと評価した。
今後の首都直下地震や南海トラフ巨大地震への備えは「現状では十分とは言えない」と指摘。全国的に統一された情報管理システムの構築や、「餅は餅屋」の考え方に基づく民間の活用、自助・共助の意識強化が求められる。今年設置される防災庁への期待感を示した。
阿南氏は「災害対応の目的は単なる救命ではなく、人々の生活や人生の悲劇を減らすことにある」と強調する。避難や移送そのものが健康を損なう場合もあり、「何が本当に被災者のためになるのか」を常に問い直しながら向き合っていくことの重要性を語った。
ゲスト / Guest
-
阿南英明 / Hideaki ANAN
神奈川県立病院機構理事長、日本災害医学会理事
研究テーマ:2026熊本地震
