会見リポート
2026年06月25日
15:00 〜 16:30
9階会見場
「イスラエル・米の対イラン攻撃 背景と影響」(12) ホルムズ海峡と国際法 中谷和弘・東京大学名誉教授、東海大学特任教授
会見メモ
国際法が専門。1996年にオマーンとアラブ首長国連邦(UAE)を訪問、両国の政府関係者と意見交換して以降、30年にわたりホルムズ海峡に強い関心を寄せ、その管理の在り方を検討、論考を発表してきた。6月15日には『ホルムズ海峡危機と国際法』(信山社)を上梓した。
ホルムズ海峡は、国連国際海洋法条約における国際海峡に該当する。同第44条により海峡沿岸国は通過通航を妨害してはならない。停止してはならないと規定されると説明。「この規定は慣習法。非当事国であるイランも拘束すると考えられる」。アメリカによる逆封鎖、イランによる通行料賦課などについて、国際法の観点からの評価を詳説するとともに、今後のホルムズ海峡の管理の在り方についても述べた。
司会 出川展恒 日本記者クラブ企画委員(NHK)
会見リポート
多国間の枠組みでの解決を提案
田中 祥彦 (北海道新聞社論説委員)
米国とイスラエルのイラン攻撃でその軍事的・戦略的重要性が露見したホルムズ海峡。いかにして国際航路の要衝の全面的な開放と航行の安全を実現するか。エネルギーの観点から研究を重ねてきた国際海洋法の権威は多国間の枠組みによる解決の道を提案した。
着目したのが、海峡の利用国と沿岸国が航行や安全のために協力することを定めた国連海洋法条約43条だ。マゼラン海峡やボスポラス海峡のように、水先案内や検疫・救助などの役務提供の対価を徴収することは認められており、ホルムズ海峡についても、一定の国際管理下に置くことは可能だという。
関係国に加え、国際機関や海運・石油会社の参加による協議の場を設け、国連などが通航料を管理する仕組みは実践的だ。海図作成などを行う国際水路機関(IHO)に事務局を置くことで政治性を排するというアイデアは、多様な利害関係者によるフォーラム設置を提言してきた中谷氏ならではの説得力があった。
国連安保理の武力行使容認の決議もないイラン攻撃は自衛権の逸脱であり、イランによる事実上の海峡封鎖や米軍の海上封鎖も船舶の自由通航を保障する通過通航権の侵害にほかならない。法の支配が揺らぐ中、「性善説を当然の前提としたままで良いのか」と苦渋の表情を浮かべたことに世界秩序が抱える本質的な危機が垣間見えた。
多国間協調の先行例として挙げたのが、ペルシャ湾の海洋汚染に対応するクウェート地域海計画(ROPME)だ。1979年に創設された計画にはイランを含む湾岸諸国8カ国が参加する。日本海や黄海でも1994年に同様の計画が設けられたが、ROPMEのような条約の採択には至っていない。
中谷氏はゲストブックに「国際法は外交の共通言語(lingua franca)である」と揮毫した。ホルムズ海峡が、その実践の場となるか。注目したい。
ゲスト / Guest
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中谷和弘 / Kazuhiro NAKATANI
東京大学名誉教授、東海大学特任教授
研究テーマ:イスラエル・米の対イラン攻撃 背景と影響
研究会回数:12
