会見リポート
2026年06月04日
13:00 〜 14:30
10階ホール
「トランプ2.0」(17) パトリック・デニーン ノートルダム大学教授
会見メモ
ポストリベラリズムを代表する論客であるパトリック・デニーン米ノートルダム大学教授が、ポストリベラル社会の構想や、トランプ後のアメリカ社会を考える論点について話した。
司会 半沢隆実 日本記者クラブ企画委員(共同通信)
通訳 森岡幹代(サイマル・インターナショナル)
会見リポート
「成功しすぎた自由主義」
池田 伸壹 (朝日新聞社オピニオン編集部)
米国の「ポスト・リベラル」思潮を先導する政治学者で、2019年にカトリックに改宗したJ・D・バンス副大統領の思想的支柱とも目されるノートルダム大学のパトリック・デニーン教授が、国際交流基金の招きで初来日し、会見した。
日本でも話題を呼んだ『リベラリズムはなぜ失敗したのか』で知られる氏は、現代アメリカ社会の分断の根本原因を、自由主義が失敗したからではなく「完全に成功したからこそ失敗した」のだと説く。
氏によれば、米国の左右両派は実は「あらゆる制約からの個人の解放」ということを推し進めた。左派は社会面、右派は経済面で自由を追求した結果、かつての中産階級と地域社会は破壊され、人々は孤立した。見捨てられた人々の不満を嗅ぎ取り、既存のシステムを破壊する存在として期待されたのがトランプ大統領であり、トランプ現象は病理の「症状」だという。
一方で、視察した神奈川県真鶴町の小学校の給食風景を引き合いに、他者への義務や配慮といった伝統が息づく日本社会を高く評価。「私が生まれ育ったかつてのアメリカに似ている」と語った。質疑応答では、崩壊したコミュニティーの再構築には、家族形成の支援の必要性を力説。また米国では非常にぜいたくなものになってしまったという、歩いて暮らせる街づくりなどでも、公共政策による積極的な介入が必要との考えを示した。
会見には、マイケル・イグナティエフ著『アイザイア・バーリン』の翻訳者である日経新聞OBの石塚雅彦氏も熱心に耳を傾けていた。リベラリズムの巨人の伝記翻訳者が会場にいたことを後日伝えると、「大変光栄だ。その方はおいくつなのか」と身を乗り出して興味を示した。
重い問いを突きつけ、知的な余韻の残る会見となった。
ゲスト / Guest
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パトリック・デニーン / Patrick J. Deneen
ノートルダム大学教授 / professor, University of Notre Dame
研究テーマ:トランプ2.0
研究会回数:17
