2026年04月23日 15:00 〜 16:30 9階会見場
「トランプ2.0」(16) 遠藤乾・東京大学教授

会見メモ

欧州研究の第一人者である遠藤乾・東京大学教授が、きしみ続ける米欧関係の行方、欧州各国はトランプの米国にどう向き合っていくのかについて話した。

 

司会 杉田弘毅 日本記者クラブ企画委員


会見リポート

「米欧の離婚」要因に米国の「価値転覆」

畠山 嵩 (毎日新聞社外信部)

 2025年1月に発足した第2次トランプ政権は「米国第一主義」をさらに先鋭化させ、「トランプ2.0」を推し進めている。この動きは、北大西洋条約機構(NATO)という同盟関係で結ばれていた米欧間に大きな溝を生んでいる。東京大学・同大学院法学政治学研究科の遠藤乾教授は、こうした状況が「米欧の離婚」に至ると指摘。その要因に米国の「価値転覆」があるとの見方を示す。

 米国の価値観の変質が露呈した局面の一つが、トランプ氏が意欲を示したデンマークの自治領グリーンランドの領有問題だ。トランプ政権は、これまでの歴代米政権が掲げてきた人権や法の支配といった「正しさ」を、「勝者=正しさ」に転換した。遠藤氏は「米国を米国たらしめていたパックス・アメリカーナ(米国による平和)の根本にあった『正しさ』を自らひっくり返した」と解説。クリーンランド問題におけるNATOの加盟国が別の加盟国を攻めうるという構図は、米国にとって同盟国が「米国を搾取する存在」であるということを浮かび上がらせた。

 一方、グリーンランド問題が欧州に突きつけたのは、米国が欧州の敵であるという事実だった。さらに、トランプ氏の「NATOは我々が必要とした時に助けてくれなかった」といった一連の発言は欧州にとって軽蔑であり侮蔑でもあった。遠藤氏は、こうした欧州にとっての耐えがたい事実や言動が、米欧同盟の「完全なる崩壊」に結びつくと説明。米国によるイランへの軍事作戦についても「米欧関係の劣化や悪化を増幅した」との認識を示した。

 米欧の離婚は、日本が長く依拠してきた「西側」の終焉を意味する。日米安保体制の中で米国と強固な同盟関係を築いてきた日本も、トランプ政権から「米国の利益を搾取する相手」と見られる可能性は今後十分ある。「(米国が)同盟国を何らかの形で大事にしてくれるといった幻想は当然もう排除した方がよい」という遠藤氏の指摘は、トランプ2.0で変容する世界における日本の立ち位置を考える上で、欠かせない考え方になると感じた。


ゲスト / Guest

  • 遠藤乾 / Ken ENDO

    東京大学大学院法学政治学研究科・法学部教授 / professor, Tokyo University

研究テーマ:トランプ2.0

研究会回数:16

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