2026年04月17日 13:00 〜 14:30 10階ホール
「高市現象と日本の政治」(5) ヴァレリー・ニケ 仏戦略研究財団(FRS)インド太平洋研究コンソーシアムディレクター、同日本プログラムディレクター

会見メモ

フランスを代表するアジア研究者の一人で、特に中国の地政学を専門とする。

中国、台湾、米国に対する高市政権の政策は、国際情勢が変化する中でどのようにとらえられるのか、今後の対応の在り方などについて話した。

 

司会 奥村茂三郎 日本記者クラブ企画委員(日本経済新聞社)

 


会見リポート

欧州と連携し発言力確保を

沢村 亙 (朝日新聞社論説委員)

 危機が連鎖し、不確実性が常態と化した時代、同盟関係を価値観の共同体ではなくディール(取引)と同列視する大統領をいただく大国と、日本はどう向き合えばいいのか。従来の前提が揺らぐ中で、この問いは一段と重みを増している。

 米英の安全保障論は同盟強化と抑止力の向上に軸足を置きがちだ。同盟依存のリスクと自律性に敏感なフランスのアジア専門家がどんな見立てを示すのか、関心があった。

 中東・欧州・アジアの複数正面で対応を迫られる米国の注意力は分散している。過去10年で国内政治も分極化し、「より安定を欠き、予測不可能になった」と分析する。

 とはいえ米国との同盟に代替はない。重要なのは従属でも離反でもない関係だ。日本は「受け身」ではなく主体的に同盟を管理する能力を高める必要がある。

 だが、能動化は米国の行動に「巻き込まれる」リスクも伴う。単独で対峙するのではなく、欧州などと立場を共有し、戦後処理や地域の安定化の議論に関与することで、孤立を避けつつ発言力を確保する――そんな現実的な道筋を示す。

 中国との関係でも現実的な処方箋を提示する。全面的に切り離すデカップリングではない。中国への依存が脆弱性に転じる領域を見極め、供給網の分散を進めるデリスキングこそが現実的な解だとする。

 一方、「高市現象」をめぐる評価には楽観的な側面が否めない。中国の圧力が国内の結束を後押ししたという指摘は一定の説得力を持つ。しかし長期的に分断を固定化し、対話の余地を狭める可能性への目配りは十分とは言い難い。強硬路線が政策の柔軟性を損なう恐れもある。

 ニケ氏の議論は脅威をあおるものではない。むしろ、厳しさを増す環境の中で「どう賢くバランスを取るか」を問うものだ。


ゲスト / Guest

  • ヴァレリー・ニケ / Valerie Niquet

    仏戦略研究財団(FRS)インド太平洋研究コンソーシアムディレクター、同日本プログラムディレクター / Director of the FRS Research consortium on Indo-Pacific and of the FRS Japan Program.

研究テーマ:高市現象と日本の政治

研究会回数:5

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