会見リポート
2021年12月03日
16:00 〜 17:00
オンライン開催
マティアス・コーマンOECD事務総長 会見
会見メモ
6月にOECD事務総長に就任したマティアス・コーマン氏(写真左)がパリからリモートで2021年版「対日経済審査報告書」を発表した。
OECDは加盟各国の経済状況などを2年に1度審査し、分析結果と政策提言を報告書にまとめて公表している。
会見では岡村善文・日本政府代表部大使(写真左から2枚目)も登壇し、報告書についてコメントした。
司会 小竹洋之 日本記者クラブ企画委員(日本経済新聞)
通訳 西村好美、宇尾眞理子(いずれもサイマル・インターナショナル)
Video without interpreters is availabe here
会見リポート
財政の持続可能性、どう確保
吉田 ありさ ( 日本経済新聞社編集委員)
マティアス・コーマンOECD事務総長の会見はパリからのオンライン開催となった。前職がオーストラリア予算大臣のコーマン氏の就任は6月で、初の日本記者クラブ会見に国内外のメディアが数多く参加した。
まず対日経済審査報告書のポイントを約10分で解説した。コロナ禍への日本政府の対応を評価し、特にワクチン接種率が高いため経済への打撃を抑えられると指摘。2021年の成長率は1・8%に回復するとの予測の背景を説明した。
課題は4点挙げた。まず長期的な財政の持続可能性をどう確保するか。公的債務の対国内総生産(GDP)比率が2019年の223%から23年は244%に上がると警鐘を鳴らし、経済が回復軌道に乗った後は財政健全化に取り組むよう促した。2つ目は生産性の向上と労働供給の拡大で、女性の労働参加へ働き方改革を強調した。
3つ目は環境問題への対応。化石燃料依存の脱却へ投資支援措置が必要と指摘した。4つ目はデジタルトランスフォーメーション(DX)の進展で、行政サービスのデジタル化は生産性の向上と財政健全化にも資すると強調した。
時間の半分以上を充てた質疑応答ではバランスに配慮する姿勢が印象的だった。「世界的なインフレ圧力のなか、なぜ日本は低インフレか」との質問には「輸入価格上昇などの影響は今後出るが、企業がかなり吸収する」と指摘したうえで「今後注視していく」と補った。
「包摂的な成長戦略に何が必要か」には「正規と非正規の賃金格差などの壁をなくすこと」と強調し、非正規で働く高齢者のスキル再教育への支援を一例に挙げた。「岸田首相が就任前に10年は消費税を上げないと述べたが、どう思うか」と聞かれると「財政健全化の取り組みは歳入と歳出の両面があり、各国がそれぞれの状況に応じて最適な組み合わせを考える」と答えた。
ゲスト / Guest
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マティアス・コーマン / Mathias Cormann
経済協力開発機構(OECD)事務総長 / Secretary-General, Organisation for Economic Co-operation and Development (OECD)