2021年10月08日 13:30 〜 15:00 10階ホール
「アフガニスタン」(2) 田中浩一郎・慶応義塾大学大学院教授

会見メモ

田中浩一郎・慶応大学大学院教授がタリバンによる統治の行方などについて話した。

田中さんは1999年から2001年まで国連アフガニスタン特別ミッション政務官としてタリバン旧政権との交渉にあたった。

 

司会  出川展恒 日本記者クラブ企画委員(NHK)

 


会見リポート

タリバンは「変わっていない」

金子 淳 (毎日新聞社外信部)

 米同時多発テロに端を発したアフガニスタン戦争は、タリバンによる政権掌握という形で終わった。国際社会の懸念はタリバンの人権政策などに集まっている。旧政権時代は、女性や少数派に対する抑圧的な政策を採っていたからだ。タリバン幹部はしきりに「穏健化」をアピールしているが、果たしてタリバンは変わったのか。田中浩一郎教授の答えは「根本的な考え方は90年代と変わらない」というものだった。

 田中教授によると、タリバンは多様な武装勢力の集まりであり、「占領軍からの解放」と「シャリア(イスラム法)の支配」という二つの目標が組織内部をまとめてきた。米軍の完全撤収でアフガンが「解放」されたいま、シャリアに基づくイスラム国家の再興がタリバンにとっての唯一不可欠の任務となり、「妥協すればタリバン内部が崩壊する可能性もある」という。さらに、タリバンが発表した暫定閣僚には99年から制裁対象となっているメンバーが多数含まれており、アルカイダと密接につながっている人物もいる。既に幼児婚やブルカ強制、メディアへの圧力なども伝えられており、タリバンが今後、女性の人権などを巡って柔軟な対応を取るとは「考えづらい」のが現状だという。

 一方、アフガンに住む約4000万人の人々は、厳しい冬を前に困窮が深まっている。タリバンにとっても国際社会の支援は不可欠だ。とはいえ、タリバンが国民の福祉やテロ・麻薬対策といった「国家の責任」を果たせなければ、国際社会がタリバン政権を承認したり、支援を再開したりするのは難しい。田中教授は「アフガン国民がある意味で人質に取られており、放置すると人道面で大きな問題になりかねない。だが、多くの障害がある」と指摘する。

 20年に及ぶ戦争が残した難題はあまりにも大きい。そして、国際社会に残された時間は少ない。


ゲスト / Guest

  • 田中浩一郎

    慶応義塾大学大学院教授

研究テーマ:アフガニスタン

研究会回数:2

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