会見リポート
2021年08月18日
13:30 〜 15:00
オンライン開催
「新・国際課税ルール」(2) 森信茂樹・東京財団政策研究所研究主幹
会見メモ
7月にG20で、巨大IT企業などの「課税逃れ」を防ぐ新たな国際課税ルールで大枠合意した。大蔵省(現財務省)主税局総務課長、東京税関長などを務めた、森信茂樹・東京財団政策研究所研究主幹が「G20デジタル課税合意の意義と今後の展望」のテーマで、合意内容やその背景、デジタル経済化での課税のあり方や今後の展望などについて話した。
司会 竹田忠 日本記者クラブ企画委員(NHK)
会見リポート
国際課税新ルール合意は「大きなステップ」
黒木 健太朗 (読売新聞社経済部)
国際的な課税ルールの転換点となるのか。G20の財務相が7月に大枠合意した多国籍企業の「課税逃れ」を防ぐデジタル課税や世界共通の最低税率の導入の枠組みについて、森信茂樹氏が合意の背景と意義を語った。
「これまでの原則からすると、大きなステップだ」
森信氏は、その国に工場などの拠点がなくても売り上げなどで課税権を認める今回の合意を評価した。約100年続く今のルールでは、拠点がない企業から国は法人税を徴収できない。「GAFA」などインターネットを使って世界中で事業を展開する巨大IT企業は、海外で稼いだ利益を低税率国の子会社に移すことで税負担を軽くしており、製造業などの伝統産業と不公平が生じている。
OECDなどで進められた協議では、課税の穴を塞ぎたい欧州に対して米トランプ政権が「GAFA狙い撃ち」と猛反発したと紹介。米国が支持に転じた最大の背景に、法人増税を掲げるバイデン政権の誕生を挙げ、セットで議論が進んだ法人税の引き下げ競争を防ぐ世界共通の最低税率の導入に合意したい国内事情があると解説した。英仏に加えインドなどにも広がった独自のデジタル課税(DST)導入の動きをGAFAが嫌ったことにも触れた。
もっとも、森信氏は2023年を目指す導入の実現を楽観視していない。各国の税収の取り分やDSTの廃止時期など、制度の具体化に向け各国の利害がぶつかる積み残しの議論は少なくない。国内法の改正や条約の批准も必要で、「米国はなかなか合意したからOKとは(議会が)いかない」と冷静な見方を示した。
新ルールによる日本企業への影響は大きくない。ただ、IoT化でさらなるルール見直しが議論される可能性も指摘し、「そうなれば製造業への影響は大きく、日本企業も安心するのは早い」とクギを刺した。
ゲスト / Guest
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森信茂樹 / Shigeki Morinobu
東京財団政策研究所研究主幹 / Research Director, The Tokyo Foundation for Policy Research
研究テーマ:新・国際課税ルール
研究会回数:2