2021年06月03日 15:00 〜 16:30 オンライン開催
「バイデンのアメリカ」(10) 中東政策 中川浩一・三菱総合研究所主席研究員

会見メモ

外務省出身で、現在は三菱総合研究所主席研究員を務める中川浩一さんが登壇し、オスロ合意以降のアメリカの中東政策を振り返るとともに、バイデン政権下でのアメリカの中東政策について話した。

司会 杉田弘毅 日本記者クラブ企画委員(共同通信)


会見リポート

脱中東掲げるバイデン政権/パレスチナ問題に関与の意思なし

坂本 一之 (産経新聞社外信部専門職)

 国際協調主義を掲げ、民主主義陣営のリーダーとして米国の存在力を高めるバイデン大統領は、紛争の火種を抱える中東でどのような政策を進めるのか。外交官として中東や米国で活躍してきた中川浩一氏は、多角的な分析と米高官の話を交えてバイデン政権の動きを読み解いた。

 バイデン氏は、5月のパレスチナ自治区ガザを支配するイスラム原理主義組織ハマスとイスラエルの戦闘で、事態の沈静化に取り組んだ。

 しかし、バイデン政権がイスラエル・パレスチナ問題の解決に向けた「交渉に関与する意思はない」と中川氏は言い切った。同政権の高官から直接、聞いたという。過去の米政権が派遣してきた中東和平特使を任命していないことからも、バイデン政権の同問題に対する関心は低い。

 アフガニスタン駐留米軍の撤退も含めてバイデン政権は脱中東を掲げる。同盟国であるイスラエルとの関係が冷え込んで同国が敵対するイランに対して軍事行動を独自に起こすようになれば、「中東情勢が緊迫化する」と警鐘を鳴らした。

 イスラエルで新政権が発足した際にバイデン氏が送るメッセージの内容が、今後の米イスラエル関係と中東情勢の行方を占うことになる。

 また、バイデン氏の中東政策の中で最も優先度の高いイラン核合意への復帰については、米国内の厳しい目もあり、「必ずしも米国が妥協して達成するものではない」という。政権高官は、イランの大統領選で反米強硬派が選出されても、「イランとの関係でエスカレーションは望んでいない」と話している。

 中東の安定に向けてイランを関与させる中、「核合意は一つの手段に過ぎない」。復帰が実現しなくても、テロやアフガニスタンといった広い形での課題でイランの関与を求めていくだろうと分析した。中東からうまく手を引こうとするバイデン政権だが、中東で続く紛争がそれを阻止している。


ゲスト / Guest

  • 中川浩一 / Koichi Nakagawa

    三菱総合研究所主席研究員 / Mitsubishi Research Institute

研究テーマ:バイデンのアメリカ

研究会回数:10

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