2021年05月28日 14:00 〜 15:30 オンライン開催
「激化したイスラエル・パレスチナ衝突―背景にいくつもの伏線」立山良司・防衛大学校名誉教授

会見メモ

5月10日から続いていたイスラエル軍とパレスチナ自治区ガザ地区を実効支配するハマスの交戦は21日、停戦に入った。

防衛大学校名誉教授の立山良司さんが登壇し、この間の経緯や背景、今後の見通しなどについて話した。

司会 出川展恒 日本記者クラブ企画委員(NHK)


会見リポート

2国家共存 もはや不可能

平田 篤央 (朝日新聞社論説委員)

 中東は複雑だ。多様な民族、言語、宗教・宗派、イデオロギー、国家体制、非国家主体が存在する。変数が多すぎる方程式のようなもので、簡単に解は見つからない。パレスチナ問題もその典型だろう。

 立山氏によると、事態はさらに複雑になっている。今回のイスラエルとイスラム組織ハマスの軍事衝突にしても、その背後に6つの伏線があると解説する。

 ①東エルサレム住民の閉塞感②エルサレム聖域をめぐる対立③ガザ問題の深刻化④イスラエル国内のパレスチナ人問題⑤パレスチナ選挙の延期⑥アラブ・イスラエル関係の変化――である。

 ここでその詳細に触れる余裕はない。それより、私の心に刺さったのは、立山氏が背景分析を踏まえて語ったパレスチナの未来像だった。

 まず、ガザの再建は進まない。

 国連とイスラエル、パレスチナ自治政府が合意した再建メカニズムは、イスラエルの治安上の懸念に配慮する。だから再建のペースはイスラエルの思惑次第だ。コンクリートや鉄骨も、ハマスの再軍備につながると判断すれば搬入できない。そもそもの問題はイスラエルによるガザの封鎖なのに、国際社会はそこには手をつけず、人道支援の形だけとる。

 そして、もはや2国家解決は不可能である。

 ヨルダン川西岸のユダヤ人入植者はすでに45万人。イスラエルにどんな政権ができたとしても、撤退させることはできない。占領地を基にパレスチナ国家をつくり、両者が共存することはありえない。パレスチナ人がイスラエル国家のなかで生き延びることを支えるしかない。彼らのレジリエンス(不利な状況で抵抗する力)を高めるための支援しかない。

 気がめいる話だが、かつて国連パレスチナ難民救援事業機関の職員として活動し、長年にわたってこの問題を見続けてきた立山氏の、現時点での結論である。


ゲスト / Guest

  • 立山良司 / Ryoji Tateyama

    防衛大学校名誉教授 / professor emeritus, National Defense Academy

研究テーマ:激化したイスラエル・パレスチナ衝突―背景にいくつもの伏線

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