会見リポート
2021年04月06日
13:30 〜 15:00
10階ホール
「バイデンのアメリカ」(3) 佐橋亮・東京大学准教授
会見メモ
国際政治、米中関係を専門とする東京大学准教授の佐橋亮氏が登壇。バイデン政権の対中戦略を詳細に分析するとともに、日本がとるべき外交政策について提言した。
司会 坂東賢治 日本記者クラブ企画委員(毎日新聞)
会見リポート
米中対立は新冷戦
高木 良平 (共同通信社外信部)
米国のブリンケン国務長官と中国の楊潔篪(ようけつち)・共産党政治局員が3月中旬に米アラスカ州アンカレジで会談し、民主主義の在り方や台湾などの問題を巡り、激しい応酬を繰り広げた。公開の場でライバル心をむき出しにするほど悪化した米中対立について、佐橋亮・東京大学准教授は「新しい冷戦」と表現し、現代の国際情勢の前提と捉えるべきだとの見方を示した。
米国の歴代政権は約50年前の米中接近以来、中国が市場化改革や政治改革を進めると期待し、中国の近代化を長年支援してきた。佐橋氏によると、対中政策に大きな変化が生まれたのが、オバマ元政権の終盤だった。中国が大国化し、米国主導の国際政治の在り方を変えようとしていると理解し、押し戻さなければ国際秩序を維持できないとの恐怖感から対中不信に傾いたと佐橋氏は指摘する。
バイデン米政権の対中政策の注目点の一つは、中国が核心的利益とする台湾の問題への異例の踏み込んだ言及という。国家安全保障戦略指針の暫定版で台湾を「先進的な民主主義国であり、経済、安全保障における死活的パートナー」と強調し、台湾を見捨てないというメッセージを明確に打ち出した。
米国は台湾を中国大陸からの圧力、工作に立ち向かう試金石と捉えており、台湾への視線は厚みを増している。一方で軍事大国化した中国が実際に台湾統一に向け軍事行動を起こす蓋然性も高まっている。米同盟国として地政学的な最前線の日本は米中とどう渡り合うべきなのか。佐橋氏は「日米関係を固めた上で中国と付き合い、言うべきことを言うのが日本外交の常道だ」と語る。
米中対立は当面続くことになりそうだ。佐橋氏は将来的に米国の世代交代が進み従来の覇権戦略の見直しが進むか、中国の経済成長が止まり政策転換を迫られる事態になれば、不和が解消に向かうこともあり得るとの見通しを示した。
ゲスト / Guest
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佐橋亮 / Ryo Sahashi
東京大学東洋文化研究所准教授 / Associate Professor, University of Tokyo
研究テーマ:バイデンのアメリカ
研究会回数:3