2021年03月09日 13:00 〜 14:30 オンライン開催
「なぜ<実質的失業者>に支援の手が届かないのか」梅屋真一郎・野村総合研究所未来創発センター制度戦略研究室長、武田佳奈・同センター未来価値研究室上級コンサルタント

会見メモ

野村総研は昨年12月、女性を対象とした「実質的失業」調査を実施。これに続き、今年3月には男性も含めたパート・アルバイト約6000人の「実質的失業」調査を行った。同研究所未来創発センターの梅屋真一郎、武田佳奈両氏が登壇、調査結果を踏まえ、実質的失業者への支援の在り方、今後の雇用対策などについて話した。

司会 竹田忠 日本記者クラブ企画委員(NHK)

 


会見リポート

雇用の安全網、非正規含め再構築求める

新井 拓真 (時事通信社経済部)

 新型コロナウイルス感染症の大流行による生活の困窮が、飲食店などで働く非正規雇用の労働者に広がっている。記者会見した野村総合研究所の梅屋真一郎氏と武田佳奈氏は、勤務シフトが5割以上減ったのに休業手当が支給されないパート・アルバイトが、推計で146万人に上ると指摘。非正規雇用を含めたセーフティーネット(安全網)再構築の必要性を訴えた。

 1月の前回会見では、このようなパート・アルバイトを「実質的失業者」と定義し、そのうち女性の数を90万人と初めて定量的に示した。多くのメディアや国会審議で取り上げられ、休業手当を受け取れない中小企業の労働者を救済する国の「休業支援金」制度の対象を、大企業のパート・アルバイトに拡大する流れを作り出した。

 今回の会見はその「続編」だ。新たな調査結果を踏まえ、男性の実質的失業者が43万人に上ると試算。103万人に拡大した女性と合わせ、146万人に及ぶことを明らかにした。失業者(約200万人)に迫る規模だ。休業手当や休業支援金は、実質的失業者の半数が知らなかった。

 武田氏は回答データから、困窮する実質的失業者の実像に迫った。大半は世帯年収が400万円未満で、配偶者を持たずに自分の収入で生計を立てている人が多い。「自ら(支援)情報を取りにいかない傾向がある」といい、効果的な情報提供の方法として対話アプリ「LINE(ライン)」の通知機能活用を提案した。

 梅屋氏は、雇用保険制度を中心とした今後のセーフティーネットの在り方に言及した。国が製造業の男性正社員を主な対象として制度を組み立てる裏で、家計を支えるサービス業の女性パート・アルバイトの存在感が高まっていたと指摘。「新型コロナは、制度全体をもう一度組み立て直さなければならないという課題を突き付けている」と語った。


ゲスト / Guest

  • 梅屋真一郎

    野村総合研究所未来創発センター制度戦略研究室長

  • 武田佳奈

    野村総合研究所未来創発センター未来価値研究室上級コンサルタント

研究テーマ:なぜ<実質的失業者>に支援の手が届かないのか

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