2021年03月17日 16:00 〜 17:00 オンライン開催
ナビル・シャアス パレスチナ自治政府議長外交顧問(元外相) 会見

会見メモ

パレスチナ元外相で、現在はアッバス自治政府議長の外交顧問を務めるナビル・シャアス氏がパレスチナからリモートで会見。5月に予定する立法評議会、7月に予定する議長選挙、バイデン米政権誕生による中東和平の展望などについて話した。

会見にはワリード・シアム駐日パレスチナ大使もリモートで参加した。

司会 出川展恒 日本記者クラブ企画委員(NHK)

通訳 池田薫(サイマル・インターナショナル)

 


会見リポート

和平プロセス復活へ、多国間の関与を

島崎 浩 (NHK国際放送局World News部専任部長)

 御年82歳となっても変わらない、エネルギッシュな語り口が印象に残った会見だったが、パレスチナが直面する苦境から何とか脱却しなければ、という危機感も垣間見えた。

 「アメリカの前政権下では大変な苦難を味わった。イスラエルを全面的に支援した結果、我々の権利は剥奪され、和平プロセスの進捗はゼロだった」

 過去4年間でイスラエルはユダヤ人入植地を次々に拡大、トランプ政権は「首都」と認定したエルサレムにアメリカ大使館を移転、さらにアラブの同胞によるイスラエルとの国交正常化という「裏切り」にパレスチナの孤立は深まっていった。

 散々煮え湯を飲まされてきただけに、氏は「2国家共存」を支持するバイデン政権への期待を繰り返し表明し、「既に間接的なメッセージのやり取りを始めており、新政権の具体的な政策を待っている段階だ」と明かした。

 しかし、オスロ合意から28年を経てパレスチナ問題への国際社会の関心が薄れる中、独立国家樹立の目標達成に向けどう戦略を立て直すのか。その答えとして力を込めたのは、ヨルダン川西岸の穏健派政治勢力ファタハとガザのイスラム原理主義組織ハマスの対立によるパレスチナの内部分裂の解消だった。

 今年5月以降、議会にあたる評議会選挙、暫定自治政府の議長選挙など、15年ぶりの選挙を実施するとし、「新たな議会が挙国一致政府をつくり、西岸とガザを完全に統一させることで、和平交渉を進展させたい」と強調した。

 一方国際社会に求めたのは、多国間の和平プロセスへの関与だ。「アメリカが唯一の仲介役では進展は非常に難しい」と4年間の苦い経験を踏まえつつ、「世界は多極化している。複数の国々が監督する仕組みが望ましい」とし、G7のメンバーである日本にも、2国家共存の実現に向け、影響力を行使するよう求めた。


ゲスト / Guest

  • ナビル・シャアス / Nabeel Shaath

    自治政府議長外交顧問(元外相) / Advisor to President for International Affairs (former Foreign Minister)

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