会見リポート
2021年03月03日
11:00 〜 12:30
オンライン開催
「バイデンのアメリカ」(2) グレン・S・フクシマ米国先端政策研究所上席研究員
会見メモ
元米国通商代表部(USTR)高官で米国先端研究所上級研究員のグレン・S・フクシマ氏がワシントンからリモートで登壇。バイデン政権の現状や今後の課題、外交政策のあり方について話した。
司会 杉田弘毅 日本記者クラブ企画委員(共同通信)
会見リポート
バイデン氏、実行力は不透明/中間選挙までの実績がカギ
今村 啓一 (NHK解説委員長)
民主党の政策に数々の助言を行ってきたフクシマ氏からみても、分断の修復を掲げてスタートしたバイデン大統領の道のりは平たんではなさそうだ。フクシマ氏はまずバイデン政権発足について「ワシントンが正常に戻った」と評価しながらも、上院で民主共和両党の勢力が拮抗していることから、バイデン大統領が実際に自ら主張する政策をどこまで実行できるか不透明との見方を示した。
バイデン政権の政策課題についてフクシマ氏は、①コロナ対策②経済回復③格差是正④気候変動⑤外交―の5点を挙げた上で、特に外交の軸は中産階級にプラスになる政策と指摘した。背景にはかつて支持者だった労働組合、低所得層が離れていることへの危機感があり、海外に雇用を奪われているという批判が根強い以上、各国との貿易協定に直ちに入るのは難しいとの見方を示した。
またEUが米国に対し気候変動など具体的な項目を挙げて関係強化を働きかけていることを踏まえ、経済・安全保障両面で期待が高い日本も、今こそ米国に対し積極的な提案を行い、同盟関係を強化すべきと提言した。
今後の政治情勢については、共和党は、現時点ではトランプ氏が次の大統領選挙に立候補する可能性が高いが、実際に立候補するかは、トランプ氏を対象に頻発するとみられる訴訟の行方と共和党内の反トランプ勢力の影響力がどうなるかによると語った。
一方、民主党は、中道のバイデン大統領が左派の要求も受け入れて党内融和に努めているが、今後左派から過激な要求が高まる可能性があり、来秋の中間選挙までに具体的な実績を残せるかがカギになると分析、中間選挙で共和党が上院過半数をとれば、後半の政権運営は一気に難しくなると予測した。さらにフクシマ氏は、海外からのテロより、むしろ国内の不満分子によるテロへの警戒感が強まっていると指摘した。
米国社会の複雑な分断に加え、武装勢力の議会襲撃計画も伝えられる中、多極化する国際情勢の行方を見る上で、米国の政治状況を治安面とともに注視していく必要があるだろう。
ゲスト / Guest
-
グレン・S・フクシマ / Glen S. Fukushima
米国先端政策研究所上席研究員 / Senior Fellow, The Center for American Progress
研究テーマ:バイデンのアメリカ
研究会回数:2