2021年03月08日 13:30 〜 14:30 オンライン開催
「3.11から10年」武田真一・宮城教育大学特任教授 /「311いのちを守る教育研修機構」統括プロデューサー/「3.11メモリアルネットワーク」共同代表

会見メモ

宮城教育大学特任教授の武田真一氏が登壇し、防災で果たすべきメディアの役割、震災伝承の現状と課題などについて話した。

武田氏は、震災時の河北新報社報道部長。その後、新設された「防災・教育」室長として、震災伝承と防災啓発のプロジェクトに取り組んだ。2020年に同社を退職、現在は宮城教育大学特任教授のほか、「311いのちを守る教育研修機構」統括プロデューサー、「3.11メモリアルネットワーク」共同代表も務める。

司会 福田裕昭 日本記者クラブ企画委員(テレビ東京)


会見リポート

災害前こそメディアは備えを

上田 千秋 (東京新聞特別報道部)

 未曽有の大災害時に河北新報の報道部長として取材の指揮を執り、その後も被災地の移り変わりを見続けている人だけに、一つ一つの言葉が重く響いた。

 震災時、サーバーが横倒しになり新聞製作が不可能になった河北新報は、災害時の支援協定を結んでいた新潟日報を頼り、翌12日付朝刊を発行し多くの読者に届けている。ただ、これは当たり前の結果ではない。2010年3月に「保険の保険の位置付け」(武田氏)で協定を結んだのが新潟日報。震災1カ月前の11年2月には両社が担当者を派遣し合い、紙面のテスト製作をしていたことが発行継続につながった。同様に協定を締結していた東北の3新聞社は被災して協力を仰げる状況ではなかった。武田氏は「偶然や奇跡的な要素はあったにせよ、全ては備えの延長だった」と振り返る。

 宮城県は定期的に大地震に見舞われる地域で河北新報は従来、防災報道に多くの紙面を割いていた。ところが、震災半年後に実施した読者アンケートで4分の3が「河北の報道は役に立たなかった」と答えている。そこで始めたのが、少人数の住民を集めて直接、防災の大切さを訴えかけるワークショップ「むすび塾」。地元と全国各地で開き先月、100回を迎えた。南海トラフ地震や首都直下地震で甚大な被害が想定される中、武田氏は「起きる前に考え、行動することがメディアには必要だろう」と強調した。

 武田氏は2年前から宮城教育大の教員として被災地の現状を伝えるとともに、災害の伝承に力を注いでいる。コロナ禍で来訪者が激減し「この1年が次の10年につながる正念場と位置づけていただけに残念な状況」と受け止める。メディアには「『記念日報道』で、10年を過ぎると震災報道が下火になるのではと心配している。節目にせず持続的に発信してほしい」と注文を付けた。


ゲスト / Guest

  • 武田真一 / Shinichi Takeda

    宮城教育大学特任教授 /いのちを守る教育研修機構統括プロデューサー/3.11メモリアルネットワーク共同代表 / Project Professor, Miyagi University of Education

研究テーマ:3.11から10年

研究会回数:16

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