会見リポート
2021年02月01日
11:00 〜 12:00
オンライン開催
「3.11から10年」 達増拓也・岩手県知事
会見メモ
岩手県の達増拓也知事がリモートで登壇。新型コロナウイルス感染症対策、震災10年を前にした復興の現状について話した。
達増氏は「(目指すべき復興を山に例えるなら)頂上に近づくほど垂直に切り立った状態。残された課題ほど複雑かつ困難で時間を要する。一つ一つ丁寧に向き合って対応していきたい」と述べた。
司会 川上高志 日本記者クラブ企画委員(共同通信)
会見リポート
復興は「頂上が切り立つ山」
熊谷 真也 (岩手日報社東京支社編集部長)
東日本大震災の発災以降、日本記者クラブで続いてきた達増拓也岩手県知事の会見は今回、新型コロナウイルス感染症対策もあわせて被災地の現状を伝えた。
岩手県は昨年7月29日まで感染者ゼロが続いた。達増知事は要因について▽人口密度の低さ▽震災の経験も踏まえた真面目で慎重な県民性―などを挙げる。感染者は比較的少ないものの、もともと基盤の弱い県内経済への打撃は大きい。中小企業者への家賃支援、飲食店への戸別訪問による感染予防のアドバイスといった県の経営支援策を説明。感染症に対する東京一極集中の脆弱性を「感染が広がりやすく、経済を止めるような行動制限が必要」と指摘し、感染防止対策としての地方創生やICT(情報通信技術)の強化を訴えた。
震災復興の面では、復興道路の整備による物流・観光面への効果などを説明した。一方で、被災地は人口流出が続いている。かさ上げや土地造成が完成しても住民が戻らず空き地が残る現状に対し、新規事業の開始や投資を行いやすい特区制度の継続を国に求めた。東京五輪に対しては「日本全体、特に東京をほぼ感染者ゼロまで抑えれば、少なくとも無観客五輪はできるのではないか」との考えを示す。「復興五輪」としての役割に期待を示しつつも「感染者がかなりいる中での開催はあってはならない」とくぎを刺した。
菅義偉首相は昨年12月、岩手県の被災地を訪れ「復興総仕上げの段階になってきている。残された課題に対し全力で応援したい」と述べた。今回の会見で「復興は何合目の段階か」と問われた達増知事は復興を「頂上に近づくほど垂直に切り立っていくような山」とたとえ、国に対し「最後に残るところほど複雑で困難な問題が残る。丁寧に末永くケアする発想と行動様式が求められている」と求めた。地元の声に、震災10年を経て国はどのような答えを見せていくのだろうか。
ゲスト / Guest
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達増拓也 / Takuya Tasso
岩手県知事 / governor, Iwate prefacture
研究テーマ:3.11から10年
研究会回数:2