会見リポート
2020年12月16日
14:00 〜 15:00
10階ホール
梅本和義・国際交流基金理事長 会見
会見メモ
昨年12月まで内閣官房TPP等政府対策本部首席交渉官を務めた梅本和義氏に、米国離脱後のTPP交渉の舞台裏や、国際情勢の展望などについて聞いた。梅本氏は外務省で北米局長、在イタリア大使などを歴任し、昨年12月に退官。今年10月1日から独立行政法人国際交流基金(JF)の理事長を務めている。
司会 出川展恒 日本記者クラブ企画委員(NHK)
会見リポート
TPP11を世界貿易の模範に/米中参加は不透明
後藤 大希 (TBSテレビ報道局経済部)
総人口5億人、世界のGDPの約13%を占める巨大市場、環太平洋経済連携協定(TPP11)。事務方トップとして交渉にあたった梅本氏は「ハイスタンダードでバランスのとれた21世紀型のルールを世界に広げていくこと」が加盟国の共通認識と強調する。
TPPは2015年に米国を含む12カ国で大筋合意に至ったものの、17年にトランプ政権が離脱を表明。急遽、米国抜きの11カ国で再協議することとなった。その際、日本は自国の利害関係だけではなく、A国とB国の間を取り持つ調整役として奮闘。「9割方のエネルギーは日本独自のアジェンダ(議題)というよりも、高い水準のルールを保ったうえで各国が合意できる答えを見いだす努力に費やされた」と梅本氏は当時の苦労を語る。日本の外交史でも例がない難交渉を乗り切り、翌18年1月、実質的に妥結。くしくもトランプ大統領がTPP離脱を表明してからちょうど1年後のことで、貿易交渉としては異例のスピード決着だった。
梅本氏は交渉がまとまった背景に、「5年以上かけた交渉を無為に終わらせたくないという加盟国共通の思いがあった」としたうえで、辛抱強く各国の主張を聞き、ワガママを言わずに交渉をまとめた日本の存在が大きいと指摘する。
今後の追加加入については「TPPのルールを守る国については前向きに対応する」という姿勢のもと、関心を示している英国やタイが正式に手を挙げるのを待っている。注目される中国については「ルールに基づいた貿易に中国が今以上に関心を示すなら結構なこと」と評価するが、米国やEUのみならず、オーストラリアとも貿易戦争を繰り広げる中国の本心はうかがいしれない。また、米国で誕生するバイデン政権の通商政策の行方も見通せず、不透明な状況が続く。
新型コロナ禍で世界の分断が深刻化するなか、TPPが協調の礎となれるか。その真価が問われている。
ゲスト / Guest
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梅本和義 / Kazuyoshi Umemoto
国際交流基金(JF)理事長 / President, the Japan Foundation