2022年02月02日 09:30 〜 11:00 オンライン開催
「2022年経済見通し」(6) 茅野みつる・伊藤忠商事常務執行役員、伊藤忠インターナショナル社長(CEO)

会見メモ

伊藤忠商事常務執行役員で伊藤忠インターナショナル社長(CEO)の茅野みつるさんがニューヨークからリモートで会見し、米国経済の見通しについて、サプライチェーンの側面などから話した。

茅野さんは米国で弁護士をした後、伊藤忠商事に入社した。2013年に大手総合商社では初めて女性として執行役員になった。法務部長を経て18年から現職。06年にはNewsweek誌の「世界が認めた日本人女性100人」に選ばれた。

 

司会 名村晃一 日本記者クラブ企画委員(テレビ朝日)

 

 

 

 


会見リポート

効率化の末、米供給網の危機

中山 淳史 (企画委員 日本経済新聞社コメンテーター)

 昨年夏、アマゾン・ドット・コムで洋書を注文したら手元に届くのに2カ月かかった。その理由が米ニューヨークからオンラインで会見した茅野さんの話でよくわかった。

 コロナ禍、異常気象、米中摩擦。米国では港湾や倉庫、トラックによる内陸輸送の現場で人手不足が昨年1年を通じて深刻だった。その結果が、モノの流れが著しく滞る「サプライチェーン(供給網)クライシス」と呼ばれる現象であった。

 興味深かったのが、コロナ禍前に「効率的と言われた経済のモデルが非効率の象徴に転じた」との話だった。「ジャスト・イン・タイム」という言葉がある。必要な時に必要なだけ仕入れて、余計な在庫は持たない。日本のトヨタ自動車に倣った無在庫経営が至るところで破綻をきたし、アマゾンだけでなく、自動車産業や量販店、農業にまで深刻な打撃を与えた。

 ただし、米国も広い。いろいろなことが同時多発的に起きているのもこの国の現実である。大手商社の現地法人トップである茅野さんも、ロサンゼルス、シアトル、ニューヨークなどいくつかの事業拠点で起きた現実を収集し、米景気が映すまだら模様を語っていた。

 例えば、コロナ禍で売れた意外なものの話。茅野さんの会社は繊維が主力事業だが、在宅勤務が増え、米国人もスーツを着る機会が減ったことで苦労する場面が増えた。そんな折、元気を与えてくれたのが南部にある接着剤の会社だ。なぜ接着剤かといえば、家にいる時間が増え、ベッドの寝心地が気になり出した米国人がマットレスを買い替えるようになった。マットレスにも接着剤が製造工程で多用されるのだそうだ。

 一方、シアトルではフェンスを扱う事業が好調だという。やはり在宅勤務の増加で庭いじりや家の改装をする人が増えた。経済は意外なところで動くものだ。

 


ゲスト / Guest

  • 茅野みつる / Mitsuru Claire Chino

    伊藤忠商事常務執行役員・伊藤忠インターナショナル会社社長(CEO) / President and Chief Executive Officer, Itochu International Inc.

研究テーマ:2022年経済見通し

研究会回数:6

前へ 2025年06月 次へ
1
2
7
8
9
10
12
13
14
15
21
22
23
24
25
26
27
28
29
1
2
3
4
5
ページのTOPへ