2021年01月14日 13:00 〜 14:30 オンライン開催
著者と語る『安倍・菅政権vs.検察庁 暗闘のクロニクル』 ジャーナリスト・村山治氏

会見メモ

2020年は黒川弘務・前東京高等検察庁検事長の定年延長や検察庁法改正問題をはじめ、検察と政治の距離がクローズアップされた。長く司法・検察を取材した著者による本書は、今回の問題の背景を丁寧な取材によって浮かび上がらせている。長年の取材を通じて考える司法のあり方、政治との関係などを聞いた。

司会 瀬口晴義 日本記者クラブ企画委員(東京新聞)

『安倍・菅政権vs.検察庁 暗闘のクロニクル』(文藝春秋 2020年11月)


会見リポート

「黒川問題」にみる検察の課題

橋場 義之 (毎日新聞出身)

 会見は司会者によるインタビュー形式で行われた。著書の核心は黒川弘務検事長問題で、その「発端」は司法修習35期の黒川氏と林真琴氏という甲乙つけがたい同期同士による2016年の法務事務次官レースだったと指摘。当時、法務検察の大勢は林氏だったが、官邸が黒川氏に固執。あからさまな人事介入と見られるのは「経験豊かな政治家なら分かるはず。やはり傲慢になっていたのだろう」と話した。

 〝政権の守護神〟との評判もあった黒川氏本人については「取材した範囲でいえば、行政的な意味で官邸に大いに貢献したと言えるが、検察事件でそのような証拠は見つからない。実際に捜査の方向を歪めたと具体的に証拠を持って語れる人はいないんじゃないか」と慎重に答えた。

 ロッキード事件以降の近年の政治がらみの事件を振り返った後、「検察に(追及する根拠としての)法律や(捜査手法としての)武器がないときにあまり(成果を)期待しすぎると危険だ。後(の追及)は野党とマスコミの役割」と検察への過度な期待も戒めた。

 検察を巡っては政治からの独立と検察の暴走チェックが大きなテーマ。「検察は国民の共有財産。国民の期待が政治腐敗の摘発だとすれば、検察は政治から独立していなければならない。一方、官僚である検察の暴走をチェックするのは政治だが、それを捜査の面でしてはだめ。ただ、人事での介入の検証は難しい」と述べ、黒川問題でも同様の困難さを吐露した。

 保守政権は官僚が黒子として水面下で波風立たないようにしたので安定していた―という中島岳志・東工大教授の「暗黙知」の捉え方を引用し「これが安倍政権では違っていた。(2つのテーマに)解はなく、バランスということになる」と解説。

 今後の検察について「どうバランスを取るのかという課題は変わらない。その決め手は、国民の信頼であり、そのためには権力犯罪をちゃんとした手続きにのとって捜査するしかない」と語った。


ゲスト / Guest

  • 村山治 / Osamu Murayama

    ジャーナリスト / journalist

研究テーマ:『安倍・菅政権vs.検察庁 暗闘のクロニクル』

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