2021年01月28日 15:00 〜 16:00 オンライン開催
ポール・マデン駐日英国大使 会見

会見メモ

ポール・マデン駐日英国大使が、4年の任期を終え、2月末に離任する。

大使着任前も含め40年近く日本とつながりのある大使が、この間の日本とのかかわりを振り返るとともに、今後の日英関係関係などについて展望した。

司会 土生修一 日本記者クラブ専務理事兼事務局長

通訳 池田薫(サイマル・インターナショナル)

◆大使のスピーチ(英語版)Transcript of the speech (in English)


会見リポート

グローバル国家の復権を説く

大林 尚 (日本経済新聞社上級論説委員)

 世界を見わたし、日英を取り巻く安全保障と経済の問題について主に3点を指摘した。

 第1は、北朝鮮と中国、そしてロシアだ。北朝鮮の核実験とミサイル問題を4年間ずっと懸案していたと明かす一方、中国に対しては英国がAIIB(アジアインフラ投資銀行)への参加にいち早く手を挙げたことについて、中国の世界への貢献期待の表れだったと正当化した。

 ロシアに関しては、英国に逃れソールズベリーに暮らしていたロシアの元二重スパイ父娘の毒殺未遂事件に触れ、北方領土問題を抱える日本にも対ロ圧力を強めるよう求めた。

 第2は、ブレグジットの意義だ。EU(欧州連合)から抜けてTPP11(環太平洋経済連携協定)入りをめざす意図を問われ、主権国家としてヨーロッパを超えてグローバルに活動の場を広げると明言した。TPPは高い規律を有している、とも語った。これは、2016年にブレグジット国民投票の結果が出た際、英国人の選択の根源を突き詰めようとした筆者が、やっとのことでいたった結論と符合する。

 しかし日本人の目でみれば、今もって簡単には理解しにくい論理なのだろう。

 第3は、グレートブリテン島南西端の景勝地コーンワルで6月にジョンソン首相が主催するG7サミット(主要国首脳会議)だ。インド、オーストラリア、韓国の政治指導者を招く意義をインド太平洋地域へ活動を広げる英国の戦略にからめて解説した。

 こうしてみると、グローバル国家としての英国の復権を説いたようでもある。その真価は、パンデミック終息後に試されよう。

 冒頭30分強、日本語のスピーチはよどみがなかった。プライベートな旅を含めて47すべての都道府県を訪れ、各地で歴史と文化に触れた充実感を語った。英国の保守リーダー層にマデン大使のような日本通が増えるのは、まことに心強い。


ゲスト / Guest

  • ポール・マデン / Paul MADDEN

    駐日英国大使 / Ambassador to Japan

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