2017年01月25日 15:00 〜 16:30 10階ホール
「中国の対外経済戦略」 郭四志 帝京大学教授

会見メモ

中国・大連出身で中国のエネルギー問題専門家。「中国企業は石油開発などで対外進出しているが、経験不足で進出先での反発もある。日本など先進国からノウハウを謙虚に学ぶべき」。「トランプ政権で中国の対米輸出は減少するが対米投資は拡大」と予測した。

 

司会 脇祐三 日本記者クラブ企画委員(日本経済新聞)


会見リポート

中国企業は対米投資を増やせるか

加賀谷 和樹 (日本経済新聞編集委員)

米国のトランプ新政権が中国に対する巨額の貿易赤字を問題視している。郭教授は会見で、中国企業が「対米投資を増やしていく」と指摘した。中国企業が米国で多くの雇用を創出できれば非難をかわせるという期待があるようだ。だが、それほど単純ではない。

 

司会の脇企画委員は「いちから(事業を)つくる投資なら(米側が)受け入れ可能かもしれないが、技術を取得するため既存の米企業を買収する場合は政治的なバリアーがあるのではないか」と提起した。中国企業の背後には同国の政府や共産党が存在すると、米欧などが警戒しているためだ。これに対し郭教授は、中国企業が「ほかの国(の企業)と連携して」投資をすることで米側の警戒を弱めることができるのではないか、と提案した。だが、パートナーが日欧など先進国の企業ならば、中国企業に大幅な情報開示を求めるはずだ。中国側はそれに応じられるのか。

 

折から、中国の通貨人民元の対ドル相場は同国経済の減速と米国の利上げで、強い下げ圧力を受けている。人民元を買い支えるため中国当局は外貨準備を取り崩し、3兆ドルの大台を割り込むことが確実視される。中国の外貨準備が減ることは、これを「原資」とする対外投資の行方にかかわる。それだけでなく、市場では「中国発の通貨危機」が起こる可能性への懸念が根強い。

 

これについて郭教授は、中国の関係者と協議したことを認めたが、「(人民元安と外貨準備減は)中国経済の大きなリスクにならない」と回答した。1997年のタイ通貨バーツの暴落で始まったアジア通貨危機のような「悪夢」が再発する恐れには直接の言及を避けた格好だ。世界で第2位の経済大国に成長した中国をめぐる発言には、客観性が求められる研究者も相当に気を使っている様子がうかがえた。


ゲスト / Guest

  • 郭四志 / Guo Sizhi

    帝京大学教授 / professor, Teikyo University

研究テーマ:中国の対外経済戦略

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