2025年05月28日 15:30 〜 16:30 10階ホール
フィリップ・ラザリーニ国連パレスチナ難民救済事業機関(UNRWA)事務局長 会見

会見メモ

中東のパレスチナ難民に教育や医療などを提供する国連パレスチナ難民救済事業機関(UNRWA)のフィリップ・ラザリーニ事務局長が会見し、パレスチナ自治区ガザの現地の状況を話すとともに、人道支援物資の供与や即時停戦を求めた。

 

司会 出川展恒 日本記者クラブ企画委員(NHK)


会見リポート

「ガザの人はもう待てない」

古川 幸奈 (毎日新聞社外信部)

 国連パレスチナ難民救済事業機関(UNRWA)のラザリーニ事務局長は会見で、まずパレスチナ自治区ガザ地区の窮状についてこう訴えた。「人々の苦しみは想像を絶する。絶望、喪失、悲しみ、不安に押しつぶされ、存在しない安全を求めてさまよっている」

 イスラエルは3月初旬からガザ地区への支援物資の搬入を阻止。2カ月半後の5月19日に搬入は再開されたものの、このままでは50万人近くの住民が壊滅的な飢餓に直面する可能性がある。ラザリーニ氏は「援助は必要な量とはほど遠い。大海の中の水滴くらいだ」と強い危機感を示した。

 イスラエルは2023年10月のイスラム組織ハマスによる越境攻撃にUNRWA職員が関与した疑惑を受け、今年1月末にイスラエル国内でのUNRWAの活動を禁止する法律を施行。5月下旬から、UNRWAに代わってイスラエルと米国が後押しする「ガザ人道財団」が支援物資の配給を始めた。

 しかし、国連がガザ地区全体で約400カ所の配給拠点を設けていたのに対し、財団の拠点はわずか4カ所しかない。うち3カ所は南部に集中しており、ラザリーニ氏は「援助の枠組みが人道的ではなく、多くの人が必要な支援を受けられない。住民を強制的に移動させるという政治的、軍事的な意図で行われる恐れがある」と指摘した。安全性が担保されない限り、財団との連携は「不可能だ」とも述べた。

 UNRWAはこれまで、1日当たり500〜600台のトラックで支援物資を届けていたという。ラザリーニ氏は「最低でもそれくらいの量が必要だ。ガザの人はもう待てない。UNRWAによる支援を認めるべきだ」と訴えた。

 会見後の6月1日には財団が設けた配給拠点付近でイスラエル軍による攻撃があり、住民ら230人以上が死傷。ラザリーニ氏の懸念が現実のものとなった。


ゲスト / Guest

  • フィリップ・ラザリーニ / Philippe LAZZARINI

    国連パレスチナ難民救済事業機関(UNRWA)事務局長 / Commissioner General, the United Nations Relief and Works Agency for Palestine Refugees in the Near East

前へ 2025年06月 次へ
1
2
7
8
9
10
12
13
14
15
21
22
23
24
25
26
27
28
29
1
2
3
4
5
ページのTOPへ