2026年05月20日 11:00 〜 12:30 10階ホール
「高市現象と日本の政治」(9) 宇野重規・東京大学教授

会見メモ

政治思想史、政治哲学が専門の宇野重規・東京大学教授が、「高市首相は『保守』なのか」「現代は『戦間期』なのか」「高市首相を支えるファンダム現象」という3つの論点を示し、高市現象や現在の政治状況についての見方を示した。

 

司会 奥村茂三郎 日本記者クラブ企画委員(日本経済新聞)


会見リポート

保守・ファンダムを問う

佐藤 賢 (日本経済新聞社編集委員)

 「高市現象」をどうとらえるか。東京大学の宇野重規教授が提示した3つの視点は、岐路に立つ日本政治を読み解く座標軸となる。

 第1は保守主義である。日本で本来の意味の保守主義が成立しているのかに疑問を投げかけた。古典的な保守は、18世紀の英国の思想家エドマンド・バークに代表されるように、伝統や慣習を尊重し、急激な変化を避けながら制度を少しずつ改めていく考え方だ。日本は明治維新と戦後改革という2度の転換を経験し、守るべき連続した伝統が弱い。

 戦後保守も「反共」と「経済成長」で結びついたにすぎず、冷戦後に空洞化した。今は憲法などの争点が前面に出て、「保守」の意味は曖昧になり、融解している。では高市首相は保守なのか。宇野氏は「保守というよりも右派政権の側面が強い」とみる。

 第2は危機の時代だ。現代は冷戦後から新たな世界戦争へ向かう「戦間期」に当たるのか、との論点を示した。20世紀の2つの世界大戦の間の時代と比べると、国際秩序が揺らいでいる点は共通する。大きな違いは、覇権国である米国自身が秩序を変える側に回りつつある点だ。

 宇野氏は戦間期とはみなさず、世界戦争を避けつつ国際秩序を再編する可能性に言及した。ただ「本当にできるかは分からない」と指摘したように、国際秩序の先行きは見通せない。

 第3にファンダム現象を取り上げた。人々は組織への忠誠や利益ではなく、「好き」「共感」といった感情で結びつく傾向が強まった。政策よりも人物のイメージが政治支持の中心になり、宇野氏は高市現象が「ファンダム政治」の典型ととらえる。

 ファンダムをポピュリズム政治家の権力獲得の手段にするのではなく、民主主義のためにどう生かすかが問われている――。宇野氏が示した問いは、日本にとどまらず、世界の民主主義に広がる。


ゲスト / Guest

  • 宇野重規 / Shigeki UNO

    東京大学教授 / professor, Tokyo University

研究テーマ:高市現象と日本の政治

研究会回数:9

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