会見リポート
2025年05月20日
12:30 〜 13:30
9階会見場
日本学術会議歴代会長 会見
会見メモ
日本学術会議を現行の「国の特別機関」から特殊法人に移行させる法案が衆議院本会議で可決された。参議院での審議を前に、日本学術会議の歴代の会長経験者6人が「『日本学術会議法』案の廃案を求める」声明を発表した。
このうち梶田隆章氏、大西隆氏、広渡清吾の3氏が会見に臨んだ。声明では法案について「科学の独立性の軽視と科学の手段化を深く憂慮させるものである」とし、あらためて廃案を求めた。
梶田さんは「科学者の懸念に耳を貸さない政府の対応には大きな失望を感じる」と述べるとともに、特殊法人という新しい組織形態することで政府の監視を強め、新組織発足時には特別な方法で会員選考を行うなど「政府がコントロールしようとしているように感じられる」とした。
司会 行方史郎 日本記者クラブ企画委員(朝日新聞)
※写真左から梶田さん、大西さん、広渡さん
会見リポート
多過ぎる問題点、廃案を
辻村 達哉 (共同通信社編集委員兼論説委員)
政府機関である日本学術会議を特殊法人にする法案が衆院を通過し、参院で審議が始まるのを前に、会長経験者6人が廃案を求める声明を発表し、そのうち広渡清吾、大西隆、梶田隆章の3氏が記者会見した。
声明は、そもそも法人化する必要性が明確でない、首相任命の監事が置かれるなど政治の介入が強まる、現会員が次期会員を推す「コ・オプテーション制」が法人移行期に適用されない、といった問題点を指摘した。
内閣府の有識者会議は2015年、同会議の組織形態について「国の機関でありつつ法律上独立性が担保されており、かつ政府に対して勧告を行う権限を有している現在の制度は、期待される機能に照らしてふさわしいものであり、これを変える積極的な理由は見いだしにくい」とした。
大西氏は「その後、法改正を必要とする問題があったとは思えない」と発言。首相が会員候補者6人の任命を拒み、その理由も説明できないという事実を覆い隠すため、学術会議の側に何か問題があったんだという強引な論法で法改正をしている、との見方を示した。
坂井学内閣府特命担当相は衆院の審議で「特定のイデオロギーや党派的主張を繰り返す会員は今回の法案で解任できる」と答弁した。広渡氏は「学術会議は学者が議論する場であり、おかしな表現だ」と首をかしげる一方、会員の解任制度について「何のために導入するのか。大いに議論されるべき論点だ」と述べた。
梶田氏は「学術に基づいて人類社会のために、時には政府と違う意見も言うような、より良い組織になるとはとても思えない」と話し、「学問の自由や民主主義が少しずつむしばまれているようだ」と懸念を表明した。
衆院の審議では、法人化が学術会議の機能強化につながる道筋も明確にならなかった。日本の政治では学術会議の助言がなかなか生かされず、公文書管理の仕組みや薬の治験制度の整備の遅れなど、国民に不利益をもたらしてきた。そうした歴史を社会で共有できていないことが今の危機的な事態につながっているように思う。政治と社会をより良くするため学問を生かす仕組みづくりを求めていくほかない。
ゲスト / Guest
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広渡清吾
日本学術会議第21期会長
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大西隆
日本学術会議第22、23期会長
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梶田隆章
日本学術会議第25期会長