会見リポート
2025年05月16日
14:00 〜 15:00
10階ホール
「『コメ』はいつまで主食かー価格急騰を考える」(5) 平丞・米穀データバンク代表取締役社長
申し込み締め切り
ウェブ参加:締め切りました会場参加:締め切りました
会見リポート
「精米歩留まりも考慮に」
堀越 智子 (日本農業新聞論説委員室 主幹)
米の情報紙を毎日2回発行するなど、流通をつぶさに見てきた調査会社の説明には説得力があった。
「そもそも農水省の公表値ほど米が取れていないのでは」という疑問について、卸の話を交え答えていただいた。2年続きの猛暑により白未熟粒や胴割れ米が増え、精米段階の歩留まり率は通常の91%から3ポイント落ちた卸もあったという。単純計算で年間21万㌧の減少になる。気候変動が常態化しており、「今後は精米歩留まりも考慮に入れるべき」との指摘は重要である。
需給調整の提言も興味深かった。年々減少する需要にぴったり合わせる生産では、今回のような不測の事態では需給がひっ迫し価格高騰を招く。余裕を持った生産にすれば、取り過ぎた分は備蓄米の買い入れ増で対応できるという。食料の安全保障の面で一つの処方箋といえる。
価格の異常な高騰については、米の収穫量が少ない→JAに米が集まらない→卸や小売りが産地の買い付けに走る→集荷競争により価格が上がる、と分かりやすく説明いただいた。備蓄米の放出による価格の適正化については、今年産の概算金が既に出ている所もあり「期待した結果にはならない」との見方を示していた。しかしその後、小泉進次郎農相となり、備蓄米が入札から随意契約に変更となり状況が変わった。果たしてどうなるのか。
米農家の経営が赤字でありながら長年〝放置”し、生産基盤の弱体化が進んだつけが、ここにきて噴出したといえる。「令和の米騒動」ではネット上で〝悪者〟を見つけては叩く風潮が広がる一方で、厳しい農業の現状を多くの国民が知ることができたのは大きな救い。平社長が「消費者も農業を理解し食べ支えることが大事」「流通現場も努力していることを知ってほしい」と要望したのが印象的。前向きな政策につながる議論を後押しする報道を改めて肝に銘じた。
ゲスト / Guest
-
平丞 / Tasuku TAIRA
米穀データバンク代表取締役社長 / President and CEO of Rice Data Bank Company
研究テーマ:『コメ』はいつまで主食かー価格急騰を考える
研究会回数:5