2025年05月27日 15:30 〜 17:00 オンライン開催
「韓国大統領選を読む」(1) 李鍾元・早稲田大学名誉教授、立教大学名誉教授

会見メモ

「非常戒厳」を宣言し罷免となった韓国の尹錫悦氏の後任を決める大統領選挙が6月3日に行われるのを前に、選挙戦に至った背景や情勢、次期政権の対外政策を考えるシリーズ企画として「韓国大統領選を読む」をスタートした。

第1回として、昨年韓国に帰国した李鍾元・早稲田大学名誉教授、立教大学名誉教授がソウルからリモートで参加。選挙戦の注目点や韓国の政治地形がどのように変容してきたのか、選挙戦でトップを走る最大野党「共に民主党」の李在明候補の外交観や今後の展望について解説した。

 

司会 澤田克己 日本記者クラブ企画委員(毎日新聞社)


会見リポート

「韓国政権を親日・反日で分けると間違う」

佐々木 真 (時事通信社解説委員)

 韓国大統領選挙はリベラル系「共に民主党」の李在明候補が勝利した。投開票1週間前に今回の選挙の位置づけと有力候補の横顔や外交観について、韓国から解説してもらい、現場に行く僕の頭に「観戦ポイント」がしっかり入った。

 李鍾元氏が選挙の注目点と挙げた李在明氏の得票率が50%を超えるかと保守系「国民の力」の金文洙候補が35(40)%を上回るかは、どうなっただろうか。結局、李候補の地滑り的な勝利はなく、金候補が保守層をまとめきり善戦したようだ。共に強固な支持者を持つリベラル派と保守派の争いは前者が優勢な中で、当面続くのかもしれない。

 李鍾元氏は、日本ではとかく過激で「反日」的と見られている李在明氏について、別の顔を紹介した。それは実用主義者としての面で、地方自治体の長として柔軟で現実主義的な政治を行ったという。党代表になってからの国会での行動は柔軟ではなかったと思うし、ソウルで李在明氏を警戒するリベラル派にも会ったが、国のかじ取りとなって、どちらの顔を見せるだろうか。

 対日を含む外交については、「余白が多い」というのが李鍾元氏の評価だった。日本との関係については、経済や地政学的な重要性を理解し、交流拡大を計画しているという。李在明外交について、米国との同盟関係を強化するとともに、中国、ロシアとの関係改善・回復を目指すとして、「安倍外交」に似ているとの指摘は興味深かった。

 李鍾元氏は「日本で親日・反日という基準だけで(韓国の)政権を区分すると間違えやすい」と強調した。歴史的にリベラルが反日で保守が親日というのは当てはまらないという。その上で、韓国はリベラル化しているのだから、日本はリベラルな人たちとも付き合い、5年後に親日的な保守大統領の登場を待つのではなく、李在明政権と話をするのが現実的だとアドバイスしたのが、耳に残った。


ゲスト / Guest

  • 李鍾元 / Lee Jong Wong

    早稲田大学名誉教授、立教大学名誉教授

研究テーマ:韓国大統領選を読む

研究会回数:1

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