会見リポート
2025年08月07日
16:00 〜 17:30
10階ホール
「イスラエルとアメリカのイラン攻撃以降の中東」高橋和夫・放送大学名誉教授
会見メモ
イスラエルとアメリカがイランの核関連施設への大規模な軍事攻撃を行ってから1カ月半が経過した。
高橋和夫・放送大学名誉教授が「イスラエルとアメリカのイラン攻撃以降の中東」と題し登壇。イラン、イスラエル、アメリカそれぞれの思惑と今後考えられることについて、トルコやパキスタンとの関係なども含め詳説した。
司会 出川展恒 日本記者クラブ企画委員(NHK)
会見リポート
イランのロシア製防衛網の弱さ露呈
岡田 美月 (産経新聞社外信部)
中東情勢に詳しい放送大学の高橋和夫名誉教授は記者会見で、6月の米イスラエルによる対イラン攻撃はイランのロシア製防空システムの脆弱さを露呈したと述べた。イランはロシアに対し、より精度の高い兵器の供与を求める一方、中国製戦闘機の調達も模索していると言及。中東地域で中国の影響力が一層高まるとの見通しを示した。
高橋氏は、イランは露製地対空ミサイル「S300」を輸入しているが、本来はより高い迎撃能力を持つ「S400」の供与を求めていると指摘。一方でプーチン露大統領はインドに対してS400の供給を認めており、「イラン人はロシアがイランを信用していないと思っているのではないか」と述べた。ロシア側にはイランの宿敵、イスラエルに配慮を示す狙いがあると語った。イスラエルはロシアが侵略するウクライナに対して防空能力に定評のある「アイアンドーム」を供与せず、間接的にロシアを利する形になっている。
イランは中国製戦闘機の調達を検討しているとされる。高橋氏は、イランを支持する隣国パキスタンが5月のインドとの戦闘で、パキスタンの中国製殲(J)戦闘機がインドのフランス製ラファール戦闘機などを撃墜したと主張していることが背景にあると指摘した。その上で、「中国の影響力が中東に及んでくる」として、イランとパキスタンの軍事協力もさらに進むとの見解を示した。
パキスタンがイランを支持するのは、イランのハメネイ体制が崩壊して米イスラエル寄りの政権が誕生すれば、パキスタンはインド、アフガニスタン、イランの3方向から囲まれることになるため、そうした事態を避ける思惑があると述べた。パキスタンとアフガンは長年、国境線を巡り対立。パキスタンと敵対するインドのモディ政権は近年、イスラエルとの関係強化を進めている。
ゲスト / Guest
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高橋和夫 / Kazuo TAKAHASHI
放送大学名誉教授 / Professor Emeritus, Open University of Japan
研究テーマ:イスラエルとアメリカのイラン攻撃以降の中東