会見リポート
2025年12月17日
14:00 〜 15:30
10階ホール
「人口減少時代を生きる」(5) 井手英策・慶應義塾大学教授
会見メモ
財政社会学が専門。著書『ベーシックサービス「貯蓄ゼロでも不安ゼロ」の社会』(小学館新書、2024年)では、社会保障や教育を無償化するベーシックサービスを導入し、不安ゼロ社会を実現すべきだと説いた。将来の日本に求められる社会保障政策や、目指すべき社会の在り方などについて聞いた。
司会 小林伸年 日本記者クラブ企画委員 (時事通信社)
会見リポート
全ての人の将来不安解消を
友野 賀世 (朝日新聞社くらし科学医療部編集委員)
経済的に大変苦しかった母親が自分を産むかどうかとにかく悩んだこと。学費の借金がかさんでヤミ金のような業者から監禁されたこと。過労で倒れて頭を床で打って脳内出血を起こしたこと。慶應義塾大学教授の井手英策さんは会見の冒頭に三つの体験を語り、命をつなぎ「今この場に呼んでいただけている現実は、運が良かったおかげ」と述べた。
運が悪ければ将来不安が直撃する状況は全ての人に開かれている、だからこそ運が悪かっただけで絶望しなければいけない理不尽さと闘う、弱者として救済される人をできるだけ減らしたい、そもそも弱者を生まない社会を目指したい、という。
井手さんは、世帯収入のピークが1996年、今の1人当たりのGDPは世界38位まで下がっているといったデータを挙げて、人々が生活防衛に必死になり、他者への寛容さを失っていると指摘。参院選で「日本人ファースト」のキャッチフレーズが支持を得たのも、思想的な根拠というより、90年代後半から繰り返されてきた「あいつがずるい、こいつが得をしている」という社会的バッシングが新たな装いで現れ、そこに票が流れたとの見方を示した。
医療や介護、教育など誰もが必要とするベーシックサービスを無償化することで、所得の少なさを理由に救済される人たちを可能な限り少なくする方向に。中間層の生活保障を徹底することで社会的な寛容さを引き出し、低所得層への給付も可能になる方向に。それが全ての人を将来不安から解放するために必要なことだと井手さんが考えている。
財源の軸は消費税を想定。逆進性が強いとされるが、消費が多い富裕層ほど払う額が多いので、集めた税をどう使うかを議論すれば逆進性の問題は解消できるとした。そして、政治家が増税について国民を説得する言葉を持てれば、多くの人々が必要性を理解するとの見解を述べた。
ゲスト / Guest
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井手英策 / Eisaku Ide
慶應義塾大学教授 / Professor, Keio University
研究テーマ:人口減少時代を生きる
研究会回数:5
