2025年12月15日 14:00 〜 15:30 10階ホール
「中国で何が起きているのか」(32) ミンシン・ペイ米クレアモント・マッケナ大学教授

会見メモ

米クレアモント・マッケナ大学の教授で、12月に『The Broken China Dream: How Reform Revived Totalitarianism』(壊れた中国の夢 改革がいかに全体主義を復活させたか)を刊行したばかりのミンシン・ペイさんが来日の機に登壇した。

10月に北京で開かれた中国共産党の重要会議である第20期中央委員会第4回全体会議(4中全会)で、2026~30年の経済政策の方向性を示す「第15次5カ年計画」の基本方針が決まった。

5カ年計画について分析するとともに、中国の外交や国内政策で優先すべき事項、台湾に対する中国の戦略がどう変化しているのかなどについて解説した。

高市早苗首相の台湾有事をめぐる国会答弁を機に、緊迫が続く日中関係についての質問にも応じた。

 

司会 高橋哲史 日本記者クラブ企画委員(日本経済新聞社)


会見リポート

中国の反応「予想を超えた」

村上 太輝夫 (朝日新聞社論説委員)

 上海出身、米国の大学で教鞭をとる世界的に著名な中国研究者である。中国報道に携わった記者ならばその名を聞いたことぐらいはあるはずだ。日本でもっと広く知られていい存在だろう。

 記者会見では、長く中国を観察してきた知見に基づく、バランスのとれた見方を披露してくれた。まず、来年からの第15次5カ年計画は「伝統的製造業の競争力向上」に言及している点が前回計画と異なっていると指摘した。それは経済の安全保障につながる問題と捉えているからだという。米国に対抗するうえでは中期的には力量不足の状態が続くが、「潜在成長力を考えれば時間は中国に味方する、と現政権は考えている」といい、その時間稼ぎの戦略を中国語の一文字「拖(トゥオ)」で表した。

 台湾問題では、中国にとって「上陸や封鎖といったやり方のリスクは高すぎる」として軍事侵攻の可能性を否定しつつ、「グレーゾーンでの軍事的圧力」が主体となる、という見立てである。妥当なところではないか。

 高市首相の台湾有事発言をきっかけとする日中対立については「中国政府の反応のレベルは私の予想を超えた」と率直な感想を吐露した。当面の中国外交は近隣諸国とのトラブルを避ける方針であるはずだからだ、とも。

ならばなおさら中国の激烈な反応ぶりには疑問が湧くところだ。会場での問いかけにペイ氏は必ずしも明確には答えなかった。もっとも、この謎解きは我々自身が引き受けるべきかもしれない。「予想を超えた」という受け止め自体が、ある種の重要なヒントを与えてくれているようにも思われる。

 ペイ氏の研究は、中国各地の膨大な資料を集めながら、政治経済体制に対する優れた理論的考察を加えている。昨年出版された邦訳書『中国の恐るべき監視体制』(河出書房新社)に特色が十分に表れている。同様なスタイルの研究書で、報道の仕事に役立ちそうなものとして、中国の様々な腐敗現象を体系的に論じた『China's Crony Capitalism』(2016年)も挙げておきたい。


ゲスト / Guest

  • ミンシン・ペイ / Minxin Pei

    クレアモントマッケナ大学政治学教授 / professor of government,Claremont McKenna College

研究テーマ:中国で何が起きているのか

研究会回数:32

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