2025年12月16日 14:30 〜 16:00 9階会見場
「人口減少時代を生きる」(4) 五十嵐中・東京大学大学院特任准教授  

会見メモ

社会保障制度改革の一つとして、OTC類似薬を含む薬剤費の在り方についての議論が政府、与党で進められている。薬剤経済学が専門の五十嵐中・東京大学大学院特任准教授が、医薬品の費用対効果評価制度についてや、現在の医療提供体制を持続させていくために必要な取り組みなどについて話した。

 

 

 

司会 小林伸年 日本記者クラブ企画委員 (時事通信社)


会見リポート

医療費 「一刀両断」議論に警鐘

池田 誠一 (NHK解説委員)

 現役世代の保険料負担が増え続け、医療保険制度は今のままでは維持できない。医療経済や費用対効果の視点で優先順位を付けるべきだとの論調が強まっている。しかし五十嵐氏は「医療経済というのは一刀両断にすべてを決められるものではない」と警鐘を鳴らす。

 会見ではデータの取り方や計算方法次第で見かけの数値が大きく変わる事例を紹介。自己負担の引き上げをめぐる議論が続いた高額療養費では、給付の伸びが国民医療費全体の伸びより急速であることが問題視された。しかし給付費データの詳しい内訳を見ると急増は2022年10月の後期高齢者医療費の窓口負担引き上げ以降に起きているとして制度変更の影響の大きさを指摘、見かけの数字だけで論じることの危うさを強調した。

 連立政権合意書には「国民皆保険制度の『中核』を守る」と書かれ、裏を返せば「すべてを守る」わけではなくなった。国民皆保険の本旨は「安価で必要な医療を受けられる」ことだが、日本の皆保険は「必要な」の範囲として「ほぼすべての医薬品」を見てきた結果、このままでは「安価」の達成が難しくなってきた。世論もこの10年ほどで変化し、制度維持のために保険給付を制限する議論もタブーではなくなりつつある。

 社会保障改革の焦点となったOTC類似薬をめぐっては、セルフメディケーションの推進には賛成しつつも保険から外すのは「最後の手段」との考え。フランスでは保険から外されなかった薬に需要が移り、結果として医療費が増えた例もあるなど課題が多く、まずは価格差の縮小、医師によるOTC推奨など段階的な策を講じるべきと提案した。

 医療費をめぐる議論は、一筋縄で解決するものではない。安易な「一刀両断」ではなく、精緻なデータ分析に基づき悩みながら議論を重ね、きめ細かな検討を経て方針を定め、国民の理解を得なくてはならない。五十嵐氏の会見はその道のりの難しさと大切さの両方を、あらためて示した。


ゲスト / Guest

  • 五十嵐中 / Ataru IGARASHI

    東京⼤学⼤学院特任准教授 / Project Associate Professor,Graduate School, The Tokyo University

研究テーマ:人口減少時代を生きる

研究会回数:4

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