会見リポート
2026年02月18日
15:30 〜 17:00
10階ホール
「2026年経済展望 激動の世界と日本を読む」(6) 林伴子・景気循環学会副会長(前内閣府政策統括官)
会見メモ
2023年から2025年まで官庁エコノミストのトップである内閣府政策統括官 (経済財政分析担当)を務めた林伴子・景気循環学会副会長が「国際環境の激変とマクロ経済政策」と題して話した。
司会 奥村茂三郎 日本記者クラブ企画委員(日本経済新聞)
会見リポート
「責任ある積極財政」へ警鐘
中西 拓司 (毎日新聞出版・週刊エコノミスト編集部 編集委員)
大国の横暴で世界が「残酷な現実」(カナダのカーニー首相)に覆われる中、日本経済はどう生き残るべきか。景気循環学会副会長の林伴子さんは、「何でも武器化する」国際秩序の激変期の中、日本経済が想定外の事態に見舞われるリスクは一層増大していると警告する。
その一例が日本国債の利回りだ。国の一般会計での利払い費は2035年で31・8兆円にも達し(25年は9・4兆円)、借り換えで雪だるま式に膨らんでいくことを示す。利払い費が増えれば財政の信認性に疑義が生じる。その結果、利回りが一層上昇し、経済停滞への国民の不満が高まって財政拡大につながり、一層の利回り上昇に向かう――という悪循環に陥りかねないと警鐘を鳴らす。
歴史上、財政破綻を繰り返すギリシャやアルゼンチンを例に、「財政破綻はクセになる」というメッセージも印象的だ。一方、財政破綻には「Contagion」(感染)がつきまとうとも指摘する。2010年代の欧州債務危機もギリシャから各国へ広がった。
林さんのこうした指摘は決して「よその国の話」ではない。日本では国債発行残高の対GDP比が200%を超えるのに楽観論が漂う。「責任ある積極財政」を掲げる高市政権は飲食料品の消費税について「2年間ゼロ」を掲げる。補正予算編成が恒例となり、官僚の「補正ありき」の姿勢も財政規律を弱めるリスクを指摘した。批判は出身の霞が関にも及ぶ。
会見では「日本財政にとって非常に大事な言葉」として、江戸後期の蘭学者、渡辺崋山の「眼前の繰廻しに百年の計を忘れるなかれ」(目の前のやり繰りに、百年の大計を忘れるな)との言葉を紹介した。
林さんは内閣府政策統括官を務めたいわゆる「官庁エコノミスト」だ。省庁再編で経済企画庁が内閣府に統合され、その存在はやや目立たなくなっている、しかし「ポスト・ポスト冷戦期」の今こそ、役割はますます大きくなっていると感じた。
ゲスト / Guest
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林伴子 / Tomoko HAYASHI
景気循環学会副会長(前内閣府政策統括官) / Vice president, The Japan Association of Business Cycle studies
研究テーマ:2026年経済展望 激動の世界と日本を読む
研究会回数:6
