2026年02月27日 13:00 〜 14:30 10階ホール
「ウクライナ」(29) 東野篤子・筑波大学教授

会見メモ

ロシアによるウクライナへの軍事侵攻から丸4年がたった。筑波大学教授の東野篤子さんが、ヨーロッパの国際政治を専門とする立場から、軍事侵攻の背景となるロシアのプーチン大統領の歴史観や、米トランプ政権発足による影響、今後の展開などについて解説した。

「ウクライナ側からみれば、すべてのスタートは2014年のクリミア侵攻。4年目ではなく12年目」とあらためて強調。今後の展開として「凍結紛争になり、低劣度の戦争を続け、国際的な関心を薄めさせウクライナへの支援を減らし、ウクライナが疲れ果てたところでロシアが手を打つということはありえる」とし、ウクライナへの支援とヨーロッパ諸国との連携が必要になるとの考えを強調した。

 

司会 出川展恒 日本記者クラブ企画委員(NHK)


会見リポート

欧州の対米不信が支援に影

西村 卓也 (北海道新聞社出身)

 2月24日で丸4年となったウクライナ戦争―ではなく、「ウクライナにとっては12年」と冒頭に一言。ロシアによるクリミア占領と東部ドンバス地域での戦いが始まった2014年から、ウクライナはロシアと戦ってきた。

 ウクライナの歴史や文化を「ロシアの派生物」と見るプーチン大統領は、「属国化」という目標を達成しない限り、戦争をやめないだろうと予測した。「たとえ停戦合意が成立しても、いずれロシアはウクライナ全体を支配しようとする」が、ウクライナ側の受け止めだという。

 欧州国際政治の研究者として欧州各国を訪れてきたが、2025年と26年で状況が大きく変わったと感じている。昨年は欧州各国がウクライナのために米国を支援の枠組みに引き止めていたが、今年に入って対米不信が増大しているのである。

 決定的だったのはトランプ米大統領のグリーンランド「所有」発言。欧州にとって現存する脅威はロシアだが、潜在的脅威には中国だけでなく米国も含まれるようになったという。しかも、「米国より中国の方がまだまともに見える」というのが本音というから、状況は深刻だ。

 日本はどう対処するか。ウクライナは対ロ戦に必要な「優先要求リスト(PURL)」を作成し、砲弾やミサイルなどを米国や欧州から調達してきたが、日本政府は非殺傷兵器に限定してPURLに参加すると読む。

 さらに、高市早苗首相は防衛装備移転三原則を改定し、輸出品を限定する「5類型」を撤廃する方向性を示している。「ウクライナが最も必要なのは防空システム」なのだが、日本国内で世論の反発も予想される。

 質疑応答に入る前に、謝意が述べられた。「報道関係者が命の危険を顧みず現場に入って状況を伝えてくれるからこそ、私たちは研究ができる」。裏返せば、研究者の分析あってこそ、ニュースは価値を増す。複雑で難解な国際関係を伝える上での「協働」が成立し得るのだろう。


ゲスト / Guest

  • 東野篤子 / Atsuko HIGASHINO

    筑波大学教授 / Professor, Graduate School of Humanities and Social Sciences University of Tsukuba

研究テーマ:ウクライナ

研究会回数:29

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