会見リポート
2026年02月18日
13:30 〜 14:30
10階ホール
「人口減少時代を生きる」(10) 静岡県の多文化共生の取り組み 鈴木康友・静岡県知事
会見メモ
衆議院議員を経て2007年から4期浜松市長を務めた。日系ブラジル人の住民が多い同市で、庁舎の中に外国人向けの学習支援センターを作るなど、共生社会の実現に向けた施策を進めた。2024年から静岡県知事。全国知事会では「外国人の受入と多文化共生社会実現プロジェクトチーム会議」のリーダーを務める。
「日本は外国人を受け入れるか受け入れないかの基本的方針を議論しないままいまにいたる」「(外国人の受け入れは)特定地域の問題ではすまされなくなっている」。多文化共生の施策を実施する上での根幹となる総合的な基本法の策定、司令塔組織の設置を国に求めた。
司会 小林伸年 日本記者クラブ企画委員(時事通信社)
会見リポート
政府の外国人施策方針「前より前進した」
田中 美保 (朝日新聞静岡総局次長)
静岡県の鈴木康友知事は2024年5月の知事就任前、旧民主党の衆院議員を2期、浜松市長を4期務めた。多文化共生施策に熱心に取り組むのは、浜松市内に1990年代から日系ブラジル人をはじめとする外国人住民が定住し、国会議員として、市長として対応に奔走してきたからだ。
国会の場でも市長としても、外国人住民の日本語習得や就学問題などのため、政府に予算措置など支援を求めたが、「特定地域の問題だ。国としての対応は難しい」として正面から取り合おうとしなかったという。鈴木知事は、働き手として日本への入国を認めながら「移民政策はとらない」と主張し、対応を自治体に丸投げしてきた政府の姿勢を批判し続けてきた。「外国人はロボットではなく生活者だ。目の前に住民がいる以上、自治体は逃げられない」といい、浜松市では独自予算で外国人の子どもの日本語学習の場を設けたり、学校に外国語のわかる支援員を配置したりするなど対応してきた。知事就任後は県全体で多文化共生施策を広げていることも紹介した。
全国知事会では、他の知事に働きかけ、多文化共生社会実現にむけてプロジェクトチームを発足させた。座長として、社会統合に向けた基本法の制定と、消費者庁のように外国人施策を一元的に進める司令塔組織の設置を国に要望した。ただ、こうした鈴木知事の取り組みに対し、批判的な意見が県に寄せられていることも紹介した。
昨年発足した高市政権は、外国人施策の担当大臣を設ける一方、入国や在留の管理を厳格にする方針を示している。施策の中身をみると、外国人との共生より取り締まりや規制を強めようという側面が強いように感じられた。
政府が今年1月にまとめた外国人施策の基本方針では、来日前に外国人が日本語教育を受けたり、日本の生活ルールや社会規範などを学んだりするプログラムの創設を盛り込んだ。子どもだけでなく大人も対象に含めるという。政府のこの方針について、鈴木知事は会見で「必要なことで、至極まっとうな対応方針だ。どちらかというと前より前進したと思う」と語った。
この発言を聞いた方たちは、鈴木知事が政府の方針を評価したことを意外に思われたかもしれない。鈴木知事は続けて、浜松市長時代に地方税の滞納処理のため未納者に督促する業務を自ら行った際、滞納者として扱われていたブラジル国籍の住民とのエピソードを紹介した。この住民は国税は納めていたが、日本の税制度に対する理解が不十分で、住民税など地方税は支払っていなかったという。鈴木知事は「意図的に税を払わなかったのではない。日本の制度を知らなかっただけだ。日本のしくみや文化を入国前に知ってもらうことは重要だ」と語った。十分な予算を付けず制度を整えようとしなかった政府が、ようやく正面からこの問題に向き合おうとしている兆しが現れたことを評価したのだ、と筆者は受け止めた。
会場からは、高市首相が共生より規制強化を重視しているのではないかとの質問が出た。鈴木知事は、高市首相が松下政経塾の後輩で若い頃からの知り合いであり、「保守的な思想がベースだが、現実的なことをのみ込む方だ」と評した。そのうえで、「外国人抜きでこの国を運営していくことは考えられないと十分に理解し、現実を踏まえて対応されるだろう。そんなに心配していない」と述べた。
ゲスト / Guest
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鈴木康友 / Yasutomo SUZUKI
静岡県知事 / Governor, Shizuoka Prefecture
研究テーマ:人口減少時代を生きる
研究会回数:10
