会見リポート
2025年12月11日
14:00 〜 15:30
9階会見場
「人口減少時代を生きる」(3) 小島祥美・東京外国語大学 多言語多文化共生センター長・准教授
会見メモ
※ゲストの都合により、YouTubeでのアーカイブ配信は行いません。
司会 小林伸年 日本記者クラブ企画委員 (時事通信社)
会見リポート
外国籍の子「不就学ゼロ」へ
宮地 語 (読売新聞社地方部)
少子化は進む。一方で、外国籍の子は増加している。そのような現状で、外国籍の子にどう教育を受けさせ、育てていくか。シリーズ企画「人口減少時代を生きる」の3回目に登壇した東京外国語大学・多言語多文化共生センター長の小島准教授は、30年以上取り組んできた研究をもとに意見を述べた。
小島氏は、政府の外国人労働者受け入れ政策の拡大により、外国籍の子の総数が大幅に増えている現状と、同時に、学校に通っていない「不就学」の子も増加しているというデータを紹介。しかし日本では、外国籍の子は「就学義務の対象外」となっており、「日本国籍の有無で、子どもたちを教育から排除することが続いてきた」と指摘した。
就学義務がないため、行政も外国籍の子の存在を把握できず、支援も行き届かない。その状況を問題視した小島氏は、2003年から2年間、岐阜県可児市に移住して調査を行った。当時、可児市の人口は10万人で、ブラジルをはじめとする外国籍の住民は4000人。その中で、外国籍の小中学生を抱える全家庭を訪問し、登校の状況を調べたという。勉強についていけないなどの理由から、公立中学校への通学を断念する子が多くいるなか、行政や地域と連携して「不就学ゼロ」を目指す取り組みを展開した。その後も国に粘り強く訴え続け、19年度から全国的な外国籍の子の就学状況調査も始まった。
23年度、可児市の納税額は約151億円で、人口がほぼ変わらない20年前と比較して約8億円増えている。市内の高校を卒業し、地元の企業に就職し、家庭を持つ外国籍の住民が増加したことが、納税額に表れているという。小島氏は「教育は未来に対する投資。外国籍の子どもたちに教育を保障することが、未来の日本の活力になり、元気や豊かさをもたらしてくれる」と締めくくった。
ゲスト / Guest
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小島祥美 / Yoshimi KOJIMA
東京外国語大学多言語多文化共生センター長・准教授 / Director and Associate Professor, Center for Multilingual Multicultural Coexistence, Tokyo University of Foreign Studies
研究テーマ:人口減少時代を生きる
研究会回数:3
