会見リポート
2025年12月02日
15:30 〜 17:00
9階会見場
「揺らぐ気候変動対策」江守正多・東京大学未来ビジョン研究センター 副センター長・教授
会見メモ
地球温暖化対策を話し合う国連気候変動枠組み条約第30回締約国会議(COP30)が先月22日に閉会した。気候変動対策を「史上最大の詐欺」と発言するなど懐疑的な立場をとる米国のトランプ氏は、大統領就任当日にパリ協定の離脱を表明しており、米国不在のもとでの開催となった。
東京大学未来ビジョン研究センター 副センター長で教授を務める江守正多さんが登壇。COP30の結果について所感を述べるとともに、温暖化の「懐疑論」「否定論」が米国においてどのように形成されていったのか、その過程や、トランプ第2期政権のもとで政治の主流となった背景、いまの米国の現状などについて解説した。
司会 滝順一 日本記者クラブ企画委員
会見リポート
「文化戦争」化する気候変動
松田 麻希 (産経新聞社社会部科学報道室)
米国の政策転換をきっかけに、気候変動対策の国際的な枠組みが不安定化している。東京大の江守正多教授は、トランプ政権下で気候変動懐疑論・否定論が主流化している現状に警鐘を鳴らすとともに、この状況が化石燃料産業や一部のシンクタンクによる長年の組織的な活動の結果であると指摘した。
米代表団の参加なしに開催された国連気候変動枠組み条約第30回締約国会議(COP30)は、焦点だった「化石燃料からの脱却」に関する議論が進まずに終わった。米国の不在が、資金拠出の面でも悪影響を及ぼしていると江守氏は見る。
トランプ大統領がパリ協定からの離脱を宣言したことに伴って、気候 関係予算の削減や環境規制の弱体化が進む。こうした動きは、懐疑論者らの「長年の夢と一致する」と江守氏。化石燃料産業や、その資金を受けて懐疑論拡散の中核を担ってきたシンクタンクは、1990年代から気候変動に関する科学や規制を攻撃してきた。その積み重ねが具現化し、トランプ政権が言いなりになっている格好だという。
科学に与える影響も大きい。国際的な気候科学インフラにおいて米国は重要な役割を担ってきたからだ。たとえば衛星観測が止まれば、データの空白が生じる。継続的で国際的な観測とデータ蓄積は、気候変動の解明だけでなく、気候モデルの高度化や異常気象の理解にも不可欠で、大きな科学的損失が心配される。
気候変動が科学の視点で冷静に議論されず、「文化戦争」の構図に取り込まれている現状を、会見を通じて痛感した。気候変動は、この100年以上の人間活動の結果であり、いま私たちが取る行動は、次世代の暮らしや地球の未来を左右する。だからこそ、目先の社会・政治の動きに振り回されないよう、その背景を見極めながら、確かな科学的根拠に基づく報道を続けていきたい。
ゲスト / Guest
-
江守正多 / Seita EMORI
東京大学未来ビジョン研究センター 副センター長、教授
研究テーマ:揺らぐ気候変動対策
