2025年12月09日 15:30 〜 17:00 9階会見場
「中国で何が起きているのか」(31) 朱建栄・東洋学園大学客員教授

会見メモ

11月7日の台湾有事をめぐる高市早苗首相の国会答弁をきっかけに、日中関係は緊迫化している。12月6日には中国軍の戦闘機が自衛隊機にレーダー照射するという挑発的な行為もあった。

日中間の対立の長期化は避けられないとの見方が強まる中、東洋学園大学客員教授の朱建栄さんが「高市発言の延焼・対立の深層・打開策―ワイドで長期的な視野で日中の未来を考える」と題し登壇。中国の見方を中心に解説した。

中国が反発した背景には近年、日本の台湾へのコミットが近年加速的に動いていることへの懸念があったとし「高市政権のさらなる台湾傾斜を警戒し『レッドライン』を引かなければならないと判断したのだろう」。11月26日に高市首相が国会答弁の中で「サンフランシスコ平和条約」をあげ「台湾の法的地位を認定する立場にはない」と発言したことが、日中関係の基盤にかかわる「台湾地位未定論」につながるものととらえられ「さらに火をつけた」。

事態を長期化させることは「経済的損失に加え、今後予定されるトランプ大統領の訪中などにより、事実上のG2が現実化することになる」とし、日本にとっては下の策と断じた。

 

司会 高橋哲史 日本記者クラブ企画委員(日本経済新聞社)


会見リポート

反発の背景に日台接近への危機感

渡辺 靖仁 (共同通信社外信部次長)

 台湾有事を巡る高市早苗首相の国会答弁に端を発した日中対立をテーマに、朱建栄・東洋学園大客員教授が会見し、訪日自粛呼びかけを含む対抗措置を繰り出して反発する中国の立場を説明した。中国側の怒りの背景には、台湾へのコミットメントを近年強めている日本に対する危機感もあると指摘。今後の日中関係の行方も見通した。

 日本からすれば中国の一連の反応は過激にも思える。だが朱氏によると、中国は、台湾有事は存立危機事態になり得るとした高市早苗首相の国会答弁について、日本の現職首相による初の「軍事的脅し」と位置付けている。朱氏は、中国側は答弁について「前提なしの武力行使を示唆した」と受け止め、強く警戒しているとみる。

 朱氏は日台接近に対する中国側の危機感にも触れた。元統合幕僚長の台湾行政院の政務顧問就任や、台湾高官の訪日、台北駐日経済文化代表処の謝長廷・前代表への旭日大綬章授与などを列挙。朱氏は、中国側はこのタイミングで「レッドライン」を引き、けん制する必要があると判断したのだろうと分析した。

 台湾問題は中国が「核心的利益の核心」と位置付けていることから、朱氏は日本側に対し真剣に対処するよう促した。問題解決を引き延ばせば4月に予定されるトランプ米大統領の訪中などを通じ、中国は日本の頭越しに米国との関係を深めようとするだろうと指摘。米中で世界を仕切るG2現実化につながり、日本にはマイナスになるだろうと述べた。

 答弁を撤回すれば日中関係への影響は最小限にとどまるとみる一方、高市氏を支持する保守層との関係もあり、高市氏にはリスクになるとの見方を示した。また、2012年9月の尖閣諸島国有化で悪化した日中関係が修復へ向かう契機となった14年の「4項目合意」にも言及。今回の事態を打開する参考になる例として紹介した。


ゲスト / Guest

  • 朱建栄 / ZHU Jianrong

    東洋学園大学客員教授 / visiting professor, Toyo Gakuen University

研究テーマ:中国で何が起きているのか

研究会回数:31

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