2025年12月23日 14:30 〜 16:00 9階会見場
「トランプ2.0」(14) 加藤喜之・立教大学教授

会見メモ

宗教と政治が複雑に絡み合う米国社会を描いた近著『福音派-終末論に引き裂かれるアメリカ社会』(中公新書 2025年9月)が話題の加藤喜之・立教大学教授が、福音派がトランプ大統領を支持する背景について、アメリカという国家と宗教の関わり・成り立ちを踏まえ分析した。

 

司会 杉田弘毅 日本記者クラブ企画委員(共同通信社)


会見リポート

分断の今こそ対話を

加藤 朗 (共同通信社文化部次長)

 米トランプ政権を支える支持者の多くがキリスト教の「福音派」というが、日本からでは実態が掴みにくい存在だ。9月刊行の『福音派』(中公新書)が反響を呼んでいる立教大の加藤喜之教授(宗教学)が、宗教学的見地から「現代米国の政治神学的危機」をテーマに米国の現状を論じた。

 加藤教授は「政教分離」について原義である「政治・非・神学」という言葉で紹介。1776年に英国から独立して誕生した米国は、その実験室としての位置づけがあったと述べた。一部ではプロテスタントを国教化する運動もあったが、対外的には「世俗国家」を強調。複数の教団が存在するプロテスタント国家として成長していく一方で19世紀中盤以降はカトリックやユダヤ教も増加し、宗教的なねじれを抱えていく。

 1950年代以降、公民権運動や女性の社会進出を訴えるカウンターカルチャーが隆盛すると、反共産主義の旗印の下で南部を中心に保守化していた米国では抵抗が広がり、1970年代後半に福音派が政治化していく。加藤教授は映画「イージー・ライダー」を例に挙げ、「虐げられた白人男性の鬱憤なども吸収し『真の米国を取り戻す』といった政治神学的な世界観を持ち始める」と解説。これが現在のトランプ支持層「MAGA」につながっていく。

 「われわれはキリスト教だけの国ではない」と語ったオバマ大統領が就任すると若者たちの一部は教会に通い始め、決して多数派とはいえない福音派が高い組織力を構築した。ただ福音派の知識層の中にはトランプ政権を批判する人も多く「福音派がすべてトランプ支持者とは限らない」と釘を刺した。

 この分断の時代をどう生き抜くか。加藤教授は「言葉による対話」が重要だと訴えた。「そういう言葉が必要になるほど、危機的な状況。きちんと議論する必要がある」と結んだ。


ゲスト / Guest

  • 加藤喜之 / Yoshiyuki KATO

    立教大学教授 / professor, Rikkyo University

研究テーマ:トランプ2.0

研究会回数:14

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