2025年08月25日 15:00 〜 16:30 10階ホール
英国王立防衛安全保障研究所(RUSI) 会見

会見メモ

英海軍の最新鋭空母「プリンス・オブ・ウェールズ」が8月12日に米軍横須賀基地に入港し、29日から30日には日英両国の専門家400人がインド太平洋地域での日英の安全保障協力の未来について議論する国際会議「太平洋未来会議(Pacific Future Forum 2025)」が艦上で開催される。

これを前に、同会議の運営にも携わる英国王立防衛安全保障研究所(RUSI)からインド太平洋プログラム主任研究員のフィリップ・シェトラー=ジョーンズさん(写真右)と、日本特別代表で特別名誉フェローの秋元千明さんが登壇。空母来航の意義、"同盟化"する日英関係の今後について、日本、英国のそれぞれの立場から解説した。

 

司会 杉田弘毅 日本記者クラブ企画委員(共同通信)

通訳 西村好美 サイマル・インターナショナル


会見リポート

英国のインド・太平洋関与の本意は

西村 卓也 (元北海道新聞論説主幹)

 英国の最新鋭空母「プリンス・オブ・ウェールズ(PoW)」の日本寄港に併せ、英国がインド・太平洋への関与を強める背景や意義を詳しく解説した。

 シェトラー=ジョーンズ氏によると、英国にとっては、この地域における自由で開かれた秩序を保ち、中国などに対する抑止力強化を図る意義がある。加えて、2024年に加盟した環太平洋パートナーシップに関する包括的および先進的な協定(CPTPP)や、日本・イタリアとの次期戦闘機共同開発(GCAP)、潜水艦を共同開発する豪英米同盟(AUKUS)への期待が大きい。労働党のスターマー政権は、安全保障面だけでなく、産業、技術、雇用など英国経済への好影響を重視するからだ。

 とりわけ日英関係は近年、連携強化が進んでいる。秋元氏は、23年の部隊間協力円滑化協定(RAA)締結のほか、PoWも加わった今年8月の演習で日本の護衛艦「かが」に英戦闘機F―35Bが着艦する訓練があったことを紹介した。日英は同盟と言っていい関係にあり、何かあった時に一緒に戦うだけでなく、平和時の安全保障協力を含めて「同盟」ととらえるべきだとの見解を示した。

 ただし、インド・太平洋地域の安全保障に関して、日英の認識が完全に一致しているとは限らない。秋元氏は、英国などとの新たな同盟関係が米国の影響力低下を補完する役割にも言及した。しかし、シェトラー=ジョーンズ氏は「欧州・大西洋とインド・太平洋のすべての防衛問題を扱う能力はない」として、英国は欧州を優先するとの見通しを示した。欧州には、台湾問題に関わりすぎて中国から不利益を被るのを恐れる「臆病さ」があることも指摘した。

 「平時におけるパートナーにとどまるのか、戦争も想定した上で抑止を実現するための同盟なのかをはっきりさせるべきだ」という提言が、今後の日英関係の課題として示された。


ゲスト / Guest

  • フィリップ・シェトラー・ジョーンズ / Philip Shetler-Jones

    / 英国王立防衛安全保障研究所 インド太平洋プログラム主任研究員

  • 秋元千明 / Chiaki AKIMOTO

    英国王立防衛安全保障研究所 日本特別代表、特別名誉フェロー / Distinguished Fellow (Special Representative to Japan), Royal United Services Institute for Defence and Security Studies, UK

ページのTOPへ