会見リポート
2025年08月07日
13:30 〜 15:00
10階ホール
「参院選後の社会:右派ポピュリズムの新たな展開」伊藤昌亮・成蹊大学教授
会見メモ
メディア論・社会学が専門の伊藤昌亮・成蹊大学教授が、7月の参院選で躍進した参政党のマニフェストの分析、1990年代からのいわゆるネット右翼や欧米の右派ポピュリズムとの共通点や違いもまじえ、支持を集めた理由を考察した。
司会 小林伸年 日本記者クラブ企画委員(時事通信)
会見リポート
中心を肯定 端を切り捨て
川口 峻 (毎日新聞社デジタル報道グループ)
参院選で躍進した参政党について、右派研究を続けてきた伊藤昌亮教授が強調したのは、支持者と批判者の観点の違いだ。
参政党が支持を広げた背景として、伊藤教授は選挙公約に着目した。3本柱として掲げられたのは、排外主義的な経済政策、農本主義的な環境政策、復古主義的な文化政策。それぞれで「共感獲得」「具体策」「コアな主張」という三段論法が敷かれていたと分析する。また3本柱自体も、経済・環境政策は共感獲得、文化政策は最もコアな主張として機能していたという。
伊藤教授が「支持層と批判層で話がかみ合っていないだろう」というのは、支持者は参政党への入り口である経済政策を、批判者は文化政策に焦点を当てているからだといい、「文化戦争的な論点で語ってもダメだ」という。
では、経済政策はどう評価できるのか。伊藤教授は、現代貨幣理論にも連なる徹底した反緊縮の主張は、失敗が許されない国家財政にとって実験不可能な経済論理だと指摘する。
また参政党の政策は、労組による賃上げに縁遠い非正規や自営業の労働者、主婦など「真ん中」の人々に向けられ、従来の政治で苦しい状況に置かれた層へのアプローチであった。しかし伊藤教授は、こうした人々を肯定するために取られた手法が「否定法による肯定法」だと断じる。「日本人」という真ん中を守るため、「端っこ」としての外国人や性的マイノリティーなどが切り捨てられた。
批判すべきは超積極財政などの非現実的な政策や端っこを切り捨てる手法であると、伊藤教授は指摘する。メディア不信に直面する報道機関にとっても、今後の論点として示唆に富む内容だった。
ゲスト / Guest
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伊藤昌亮 / Masaaki ITO
成蹊大学教授 / professor, Seikei University
研究テーマ:参院選後の社会
研究会回数:2