会見リポート
2025年08月20日
14:00 〜 15:00
10階ホール
「トランプ2.0」(11) 北岡伸一・東京大学名誉教授
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会見リポート
日本は「自力」の強化を
長戸 雅子 (産経新聞社論説副委員長)
現下の国際秩序を「崩壊寸前」と表現した。
力による現状変更の排除と自由貿易の拡大―。戦後、米国が主導してきた国際秩序の二本柱が、米国の行動で揺らいでいる。トランプ米大統領は、ウクライナ侵略を続けるロシアを正面から非難せず、ロシアの要求にも沿った和平交渉に意欲を示す。同盟国に対しても関税を「武器化」して取引を迫る。
この状況に「驚いてもいるが、米国の本質でもある」と語る。19世紀の領土拡張やモンロー主義、20世紀のパナマ運河の管理など歴史をひもとけば、確かに「身勝手ともいえる『国益本位』」の大国の姿が浮かび上がる。「米政治では正しさより国民の支持が重視される」からだ。
一方で「『おかしい』と気づいたら政策を改める」のも米国だが、他国からの働きかけはほぼ効かず、改めるまでの過程では「国民や他国が被害を受ける」現実を指摘した。
こうした中で日本は「『自力』を強化することが重要」と説く。まずは安全保障だ。1980年代の日米貿易摩擦をめぐり、「日本が(交渉の各場面で)押し切られたのは安全保障を米国に依存していたからだ」とし、「台湾有事には可能な限りの備えが必要」と訴えた。
経済や産業では、外国人労働者の受け入れが必須であり、外交面では、地域の同志国との連携を挙げた。韓国、東南アジア、オーストラリア、バングラデシュ、太平洋島しょ国と「西太平洋連合」をつくり、日本外交の基軸の一つとする。中国の影響力が強い地域だが、日本には、各国との長年の信頼関係がある。対米協調は必要だけれども、アジア太平洋地域、エジプトなど他の地域有力国と協力を強化するよう促した。
国連大使時代、安全保障理事会の改革実現に尽力した。準常任理事国の創設など、安保理の代表性を高める活動を進めることは「世界から信頼と支持を集める日本の義務であり、権利でもある」と明言した。
ゲスト / Guest
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北岡伸一 / Shinichi KITAOKA
東京大学名誉教授、国際協力機構特別顧問 / professor emeritus, Tokyo University
研究テーマ:トランプ2.0
研究会回数:11