2025年11月04日 14:00 〜 15:30 9階会見場
著者と語る『「ニッポンの移民」―増え続ける外国人とどう向き合うか」』是川夕・国立社会保障・人口問題研究所 国際関係部部長

会見メモ

世界的に少子化が進む中、先進国間で外国人労働者の争奪戦の展開が予想される。低賃金に加え、円安の日本はもはや「選ばれない国」になると言われている。ところが、日本の外国人人口は増え続けている。世間で言われていることと実態の乖離に着目した本書(ちくま新書、10月6日)は、それがなぜかを解き明かした。著者である是川夕さんに、日本を目指す外国人がこれからも増えると考える理由や、移民をめぐる歴史などについて聞いた。

 

司会 小林伸年 日本記者クラブ企画委員 (時事通信社)

『「ニッポンの移民」——増え続ける外国人とどう向き合うか』(ちくま新書)


会見リポート

未来を「創る」移民論議を

井上 裕 (元日本経済新聞記者)

 安易な排除や管理に「戻る」のではなく、未来を「創る」ための移民論議を。是川さんが会見で終始訴えていたのは、このことだったと思う。

 話は外国人問題を巡る様々な誤解を解く形で展開された。まず日本は今も外国人に閉鎖的だという誤解。

 移民は「国境を越えた居住地の変更を伴う移動をする人」と定義される。1年以上の長期滞在者を「長期移民」と呼び、これを滞在期間の更新回数に上限のない「永住型」と、上限がある「一時滞在型」に区分する。

 会見ではデータが駆使され、日本は実は永住型の年間受け入れ数で既に世界10位。就労目的で国境を越える「労働移民」に限れば、2024年統計時点で米独仏に次ぐ世界4位の受け入れ国に。ハイスキル人材の受け入れ規模は人口比で米国を上回り、絶対数でも英独仏の上を行く意外な事実が次々に明らかになった。

 日本には移民政策がないという政策不在論にも矛先が向いた。

 欧米では旧植民地からの移住者が植民地独立後も永住移民となり、永住移民が家族を呼びよせる家族移民が今も永住型の多くを占める。

 一方、日本の現状は人口減、特に生産年齢人口の縮減を補う「労働移民」が受け入れの中心。1989年の改正「出入国管理、及び難民認定法」以降、私たちも良く知る、技能実習制度や、在留資格向上に直結する特定技能認定制度の拡充などで日本型の移民政策を積み上げてきたというのが是川さんの主張だ。

 会見後半であえて「技能実習制度は現代の奴隷制度なのか」の問いを持ち出したのも面白い。日本の政策はOECDのレビューでも評価され、今や日本はアジアから先進国への国際移住で最大の受け入れ国になっている。

 排外主義が世界に吹き荒れる中、総量規制を始めとする単線論と一線を画し、データと事実から移民問題を考える必要を示した会見だった。

 


ゲスト / Guest

  • 是川夕 / Yu KOREKAWA

    国立社会保障・人口問題研究所国際関係部部長 / Director of the International Relations Department,National Institute of Population and Social Security Research

研究テーマ:ニッポンの移民 増え続ける外国人とどう向き合うか

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