会見リポート
2025年08月05日
14:00 〜 15:00
9階会見場
ロバート・フロイド包括的核実験禁止条約機関(CTBTO)準備委員会事務局長 会見
会見メモ
包括的核実験禁止条約機関(CTBTO)準備委員会のロバート・フロイド(Robert FLOYD)事務局長が会見した。8月6日の広島平和記念式典及び9日の長崎平和祈念式典に参加する予定。
司会 杉田弘毅 日本記者クラブ企画委員(共同通信社)
通訳 長井鞠子 サイマル・インターナショナル
会見リポート
核不使用への強い意志不可欠
伊東 星華 (共同通信社外信部)
戦後80年がたって、世界は再び核兵器が使われるかもしれないという恐怖に包まれている。ウクライナを侵攻するロシアが核使用をちらつかせ、中東では核脅威の排除と主張してイスラエルと米国がイランを空爆した。欧州でも核抑止への依存が進み、核兵器の再配備も取り沙汰される。地政学的な緊張はここ数年で急激に高まっている。
フロイド事務局長によると、広島・長崎への原爆投下後、1996年に包括的核実験禁止条約(CTBT)が国連総会で採択されるまで、世界で行われた核実験は計2千回超。毎年平均の爆発規模は広島に投下された原爆の1千倍近くだったという。
CTBTは署名187カ国、批准178カ国だが、米国や中国などが批准しておらず、条約発効には至っていない。それでも条約採択以降、世界で核実験は確実に減り、実施国は「たった1カ国(北朝鮮)」のみにとどまっている。フロイド氏は、これはCTBTの国際監視制度(IMS)による効果だと指摘した。
IMSに基づき世界には300カ所以上の監視施設が設置されている。核実験に伴って発生する地震波などのデータを24時間態勢で収集し、核実験の兆候を探知できる仕組み。探知技術の向上により、現在では広島原爆の30分の1規模の核実験も探知できるようになったという。フロイド氏は「IMSの下でいかなる核実験も覚知できるようになった。CTBTは核実験に反対する強い規範を作り出した」と述べ、条約が未発効ながらも核実験をさせない意志を持った各国から強い支持を得ていると強調した。
この80年、戦場で核兵器は一度も使われなかった。「広島・長崎の原爆で失った命を悼み、戦争の恐ろしさを記憶することが重要だ」というフロイド氏の言葉をかみしめる。核の不使用には被爆体験の語り継ぎと国際社会の強い意志が不可欠だと改めて思い知らされた。
ゲスト / Guest
-
ロバート・フロイド
包括的核実験禁止条約機関(CTBTO)準備委員会暫定技術事務局事務局長