会見リポート
2025年05月14日
15:00 〜 16:30
10階ホール
「宇宙開発利用の新しい潮流と政府・ベンチャーの活動の現状と将来」中須賀真一・東京大学大学院教授
会見メモ
宇宙システム工学、人工知能宇宙応用などが専門で、超小型衛星「キューブサット」開発の第一人者として知られる中須賀真一・東京大学大学院教授が「宇宙開発利用の新しい挑戦と政府・ベンチャーの活動の現状と将来」について話した。
司会 倉澤治雄 日本記者クラブ企画委員
会見リポート
民間主体で新技術挑戦を
信田 真由美 (毎日新聞社くらし科学環境部)
政府は宇宙航空研究開発機構(JAXA)に企業や大学による宇宙分野の技術開発を支援する基金を設けるなど、宇宙関連の予算を増やしている。中須賀真一・東京大大学院教授は「予算は3年で2.5倍になった。政府が宇宙を基幹産業にしていこうとかじを切った」と話す。
宇宙開発は政府から民間に移ってきている。日本には100社を超える宇宙ベンチャーがあるが、米国と比べるとまだ少ない。中須賀教授は「米国のように最初は政府がお客になって継続的にお金を出すことでビジネスとして回していく必要がある。失敗を恐れずに民間が主体的に新しい技術に挑戦し、実証を繰り返し、海外市場へも展開していくべきだ」と強調する。
日本の勝ち筋はどこにあるのか。中須賀教授が日本の強みと見ているのは日本版GPS(全地球測位システム)とも呼ばれる準天頂衛星「みちびき」や地球観測衛星だ。米国のGPSの測位誤差は約3㍍であるのに対し、みちびきは3㌢程度と高精度だ。「どう使っていくかで非常に大きな産業になると期待できる」
一方でロケットは打ち上げ数が少なく、実証の機会がなかなか得られないことで、ロケットや衛星技術の成長の遅れにつながっていると考える。「民間の小さなロケットがどんどん日本の小さな衛星を打ち上げる環境を作ってほしい」と期待する。
大学も宇宙産業の成長に重要な役割を果たしている。大学が開発する超小型衛星はこれまでの100分の1ほどの値段ででき、ここ3~4年で投資も集まるようになってきたという。中須賀教授も10社を超える企業と共同研究をし、研究室からベンチャー企業も誕生した。「我々が新しい世界を切り開いてきたという自負がある。宇宙産業は突然大きくなって人手が足りていないが、大学で失敗を重ねながら、もっと難しい衛星作りに取り組むことが重要だ」
ゲスト / Guest
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中須賀真一 / Shinichi NAKASUKA
東京大学大学院工学系研究科教授
研究テーマ:宇宙開発利用の新しい潮流と政府・ベンチャーの活動の現状と将来