会見リポート
2025年05月29日
16:30 〜 17:30
10階ホール
総会記念講演会 細川護煕 元首相
会見メモ
細川護煕・元首相が「私のプリンシプル」をテーマに講演した。
司会 老川祥一 日本記者クラブ理事長(読売新聞社)
会見リポート
舌鋒鋭く鑑識眼は不変
芹川 洋一 (日本経済新聞社客員編集委員)
やはり貴種である。文武両道の武将として知られる幽斎から数えて18代の細川家当主。芸術文化への造詣の深さと今をみる眼の確かさをあらためて痛感させられた。
講演は自らの生い立ちからはじまった。幼少期から中国の古典を学び、小学生になると父(護貞)に叱られながら論語、古今集、万葉集の素読を半べそをかきながらやった。
学校教育になじめず落第・転校を経験。古今東西の書物を読み歴史を学び、祖父(護立)によって各界の第一人者の謦咳にも接した。
こうして形成された教養人政治家は「歴史の一瞬をつかみとるという意識が明白になった」という。そこで立ち上げたのが日本新党だった。
自民党支配の1955年体制を壊すため「永田町へ討ち入りした政党だった」。まるで桶狭間の信長のごとくである。そして歴史をつくった。
首相2人、野党党首5人、自民党幹事長1人、知事3人、衆参両院副議長が日本新党から誕生した、と紹介したあたりにも自負がのぞく。
先の戦争を侵略戦争と明言した歴史認識、政権交代可能な体制をめざした政治改革、コメの部分開放を受け入れたウルグアイ・ラウンド交渉を政権の業績にあげた。
北方領土交渉では93年の東京宣言にふれて、安倍晋三首相による2018年の「シンガポール合意」が2島返還に路線転換したのなら「理解に苦しむ」と非難。
企業団体献金の扱いになおケリがつかないのは「政治の怠慢として大いに批判されてしかるべきだ」と苦言も呈した。
政治の第一線を退いて30年近くとはいうものの、舌鋒鋭く鑑識眼は変わらない。
揮ごうは「君臣並耕」。孟子にある、真の賢者は人民とともに耕して雑用もいとわず、政治もみるものだという意味の言葉だそうだ。突きささる箴言である。
ゲスト / Guest
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細川護煕 / Morihiro HOSOKAWA
元首相